2002 Fiscal Year Annual Research Report
発生主義課税における控除のタイミングに関する研究-課税繰延の観点から-
Project/Area Number |
14730132
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
一高 龍司 京都産業大学, 法学部, 助教授 (30330137)
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Keywords | 法人税 / 租税法 / 租税会計 / 債務確定 / 課税ベース / 発生主義 / 税務会計 / 前受収益 |
Research Abstract |
発生主義を基本的に採用する我が国の法人税法における妥当な控除のタイミングを論じるに際し(このことは多く所得税の場合にも当てはまる)、企業会計上の実現、対応、及び発生という伝統的な認識基準を援用して、批判的考察がなされることがある。この点の妥当性を租税法の立場から検討するためには、先ずこれらの概念が企業会計上いかなる意義と機能を有しているかを押さえておかなければならない。そこで、日米の学説及び日米の基準設定機関におけるこれまでの主要な議論を整理検討し、そこから、これらの概念の、特に伝統的な収益費用観の下での多義性、主観性、類似性を抽出し、租税法における直接的な援用の困難さを指摘した(後掲拙稿「費用認識過程における実現、対応及び発生の意義(1)(2・完)」)。そこではさらに、昨今の財務会計上の基本枠組みとして、より重要性と影響力の高い資産負債観の下では、概念間の重複、多義性及び利用可能性の程度の改善が見られるが、そこでむしろ高まる主観性の問題は、租税会計への応用に際し深刻な問題ともなりうることを浮き彫りにした。資産負債観的な見方によれば、基本的にはあらゆる資産減少・負債増加を費用と解するところ、その将来的な増額要素(利益の消極要素)としては、既に2002年1月に公表した拙稿「米国内国歳入法典における経済的履行基準の基礎理論-債務確定基準徹底の行方-」(総合税制研究10号所収)で検討した引当金等の項目のみならず、前受収益の繰延も挙げることができ、租税中立性ないし課税の公平性の観点からは、これら両者を関連づけて把握・分析する必要がある。かかる認識の下に、拙稿「米国連邦所得税における前受収益の課税理論-役務提供の対価を中心に-」(総合税制研究11号所収)を執筆し、米国でその繰延が判例上許されないと解されている根拠とその妥当性の分析を行った。なお、現在、より現代的な問題点の一つであるストック・オプションの所得課税上の争点について既に学術雑誌『法律時報』2003年4月号の依頼原稿を搭載すべく、投稿を終えたところである。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 一高龍司: "費用認識過程における実現、対応及び発生の意義-租税会計の予備的考察として-(1)"大阪産業大学経営論集. 3巻2号. 143-161 (2002)
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[Publications] 一高龍司: "費用認識過程における実現、対応及び発生の意義-租税会計の予備的考察として-(2・完)"大阪産業大学経営論集. 3巻・3号. 149-173 (2002)
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[Publications] 一高龍司: "米国連邦所得税における前受収益の課税理論-役務提供の対価を中心に-"総合税制研究. 11号. 1-55 (2003)
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[Publications] 一高龍司: "学界展望 租税法学界の動向(平成13年度)"租税法研究. 30号. 115-159 (2002)