2002 Fiscal Year Annual Research Report
証券市場における会計士監査の役割期待に関する国際比較のための制度的・経済的分析
Project/Area Number |
14730133
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
松本 祥尚 関西大学, 商学部, 助教授 (30219521)
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Keywords | 監査品質 / Sarbanes-Oxley法 / 監査報酬 / コンサルティング報酬 / SEC / AICPA |
Research Abstract |
本年度は、アメリカにおける監査の品質を確保するための各種方策を調査した。その過程で明らかとなったアメリカの監査制度を取り巻く情況は、以下のとおりである。 (1)[Sarbanes-Oxley法]証券市場における会計士監査の役割は、投資意思決定のための情報の信頼性を保証し、それによって証券市場の流動性を確保することにある。その信頼性は監査の品質の水準に依存しており、監査品質を保持するために、2000年以降、SECとAICPA等を中心として種々の改革が実施された。にもかかわらず、2001年10月のEnronの粉飾決算に端を発して、数々の企業不正が顕在化することとなり、2002年7月のSarbanes-Oxley法制定に至った。 (2)[監査報酬の開示]2000年頃から監査人の独立性を問題にしてきたSECが採った行動は、会計事務所に支払われている監査報酬とその他のコンサルテイング報酬の金額をクライアント企業に開示させることによって、会計士の被監査会社に対する依存度を明らかにし、監査人の過度な依存を牽制する、という方策である。このSECによる規制は、独立性規制の一環として2001年より実施されており、2002年以降さらに強化された。 (3)[リスク負担機能]会計士監査の重要な経済的機能は、情報の信頼性を保証することによって、事後的に発生し得る損害を未然に防ぐ(発生した場合には法的プロセスを通じて補填する)ことにある。このリスク負担機能が会計土に備わっているか否かが、監査品質を検討する場合の重要な要素といえる。SECが開示を強制した会計士の監査報酬とコンサルティング報酬は、会計土のクライアント企業への依存度を明らかにし、その依存関係を牽制するとともに、投資者に対して会計事務所のリスク負担可能性を示唆するデータとして有効に機能すると考えられる。
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Research Products
(1 results)