Research Abstract |
統計的推測理論において,推定方式の良さを測る手段として,クラメール・ラオの不等式があり,さらにこの不等式を精密化したバッタチャリャの不等式が知られている.この不等式はウォルフォビッツにより逐次の場合に拡張された,これらの不等式で与えられる下界を達成する推定方式を有効であるというが,ウォルフォビッツの不等式に対して有効な推定方式が得られるのは非常に希であって,殆どの場合には達成不可能であることがGhosh, Stefanov等によって示された.本研究代表者は,逐次の場合のバッタチャリャ型の不等式を得て,ベルヌーイ試行の列に対してその達成について考察し,ウォルフォビッツの不等式の達成の場合との顕著な差異を示した.また,クラメール・ラオの不等式からベイズ推定方式のベイズリスクに対する下界が得られた.本研究代表者は,非正則な場合として,位置尺度母数をもつ一様分布について,その位置母数の逐次区間推定方式に関する結果を得た.この結果は,よく知られているチャウ・ロビンスの逐次区間推定方式に比べて,標本数に関して漸近的に次数が(1/2)乗で十分であり,漸近一致性,漸近有効性など優れた性質をもつことを示した.さらに,密度関数の台が有界な分布の位置尺度母数分布族について,同様の結果を得た.このことは,分布形について,何らかの事前情報があるときには,そのことを踏まえて推測を行なえば,有効であって,標本数が少なくて済むような推定方式が得られることを意味する.
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