Research Abstract |
燃焼現象は急激な化学反応による熱の発生,周囲空気と火炎との間における熱と物質の移動を伴う複雑な現象である.重力のはたらく地上では,高温の燃焼ガスが浮力により上方に運ばれていくと同時に新しい空気が下方から供給され,対流が生じる.この浮力と対流が火炎の形状や燃焼反応に大きく影響し,燃焼現象を複雑にしている.微小重力下での燃焼は,浮力による対流が大幅に低減するため,地上とは異なる燃焼現象がおきると予想される.さらに燃料内の不純物や,外的環境の変化といった外乱が加わった燃焼現象の考察はこれまでなされていない. そこで,本研究では,確率反応拡散方程式による燃焼過程のモデリングを行い,燃焼が対流によって進行する通常の燃焼過程と,拡散によって進行する微小重力下での燃焼過程について,外乱が有る場合と無い場合についてそれぞれ数値シミュレーションによる解析を行い,通常環境下と微小重力下での燃焼過程の特性を比較検討した.特に,外乱が燃料内の不純物に起因するような場合と燃料濃度と独立な周囲の環境変化に起因する場合とに分けて考察を行った. その結果,重力下の燃焼過程では,燃焼はリング波となって空間上に広がり,外乱の影響は余り見られないが,微小重力下での燃焼過程では,燃焼は最初リング波となって進行するが,他のリング波が接近すると衝突前に反射・消滅といった反応を示し,これらの影響でリング波がちぎれ,小さなスポットや小さなリング波となった.外乱の影響については,外乱の無い場合は,燃料を供給し続けると,そのままある時点で収束し,安定した燃焼になるが,外乱が作用する場合は生成・消滅を繰り返す動的パターンが持続された.これは外乱によって,他のリング波の接近とは無関係にリング波が自ら崩壊する現象が生じ、崩壊した部分の隙間を埋めるように再びリング波が生成し、また消滅するという動的パターンが持続されるためである.重力下および微小重力下での燃焼過程において,外乱が燃料内の不純物に起因するような場合と燃料濃度と独立な周囲の環境変化に起因する場合との比較検討を行ったが,両者に顕著な差異は見られなかった. 本研究でのシミュレーション結果は,微小重力下での実際の燃焼実験の結果と一致し,本論文で提案したモデルの有効性を示している.
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