2003 Fiscal Year Annual Research Report
マリアヴァン解析による統計的推測と数理ファイナンスへの応用の研究
Project/Area Number |
14740078
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内田 雅之 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助教授 (70280526)
|
Keywords | 拡散過程 / 漸近展開 / マリアヴァン解析 / 統計的漸近理論 / 数理ファイナンス |
Research Abstract |
近年数理ファイナンスの分野で頻繁に適用されている小さな拡散をもつ拡散過程モデル(以下,小さな拡散過程モデルと呼ぶ)に対して,オプションの価格の統計的推定問題を漸近分布論の立場から研究を行った.過去の株価や金利などのファイナンスデータが小さな拡散過程モデルに従っている時,データから未知のドリフトパラメータや拡散係数パラメータの推定量を構成し,小さな拡散過程モデルに推定量を代入した予測モデルから,オプションの価格の推定量を導出し,その推定量の漸近不偏性等の漸近的性質を証明した.漸近的性質の証明には,従来の伊藤解析に加えてマリアヴァン解析,特にマリアヴァン共分散の非退化性が重要な役割を果たすことがわかった.マリアヴァン解析を応用した漸近展開を使用することにより,数理ファイナンスの分野において重要な研究課題の一つであるオプションの価格の統計的推定問題を漸近分布論の立場で捉えることが可能になった. さらに,本研究で提案されたオプションの価格の推定量に対して,漸近的なパフォーマンスを数値的に検証するために,計算機による数値実験を行った.膨大な量のファイナンスデータに応用することを踏まえて,高速なコンピュータを用いてモンテカルロ・シミュレーションを行い,本研究で証明された漸近的性質を裏付ける結果を得た. また,拡散過程を含む一般の連続時間確率過程モデルやセミマルチンゲールにおける統計的推測理論の研究者が集う研究集会やセミナーに参加し,数多くの研究発表を重ね,その研究成果について意見交換を行った.研究発表については,国内だけにとどまらず,ヨーロッパでも行い,海外の研究者から有益な意見及び情報が得られた.
|