2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14740105
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小櫃 邦夫 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (00325763)
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Keywords | リーマン面 / モジュライ / Weil-Petersson幾何 / Takhtajan-Zograf計量 / Poincare級数 / 漸近解析 |
Research Abstract |
今年度は、代表者が申請時に研究計画で述べた予想のひとつを、Scoot A.Wolpert氏と共同で完全に証明した。すなわち、「有限型リーマン面のモジュライ空間の境界におけるWeil-Petersson計量の漸近展開の第2項にTakhtajan-Zograf計量が現れる」ことを示した。これは異なるコンテクストで導入された両計量の直接的な結びつきを明らかにした、初めての大きな成果であるととらえている。すでにWolpert氏と共著で証明の原稿を書きあげている。2003年9月の千葉大学における数学会でも報告した。現在は、この成果のモジュライ空間の幾何への応用を模索している。Wolpert氏とアラバマ大学の山田澄生氏とも共同でこの方面での考察を進めている。 最近Wolpert氏が、リニマン面上の測地線の長さをモジュライ空間上の函数として考えた測地線函数の新しい変分公式を与え、これは以前知られていた公式より有用であることを明らかにしている。代表者はこの新しい変分公式の別証明を与えることができた。私の証明により、リーマン上のあるPoincare級数が特別な事情により実は単なる定数になってしまうことが、Wolpert氏の新しい公式が簡明な表示もつ理由であることが分かる。私の証明の手法がさらに応用を生むことを期待している。 また、研究結果ではないが、最近C.Voisin氏のHodge theoryの教科書の第1巻を読了した。これで、代表者が研究計画で書いた「高次元多様体のモジュライのWeil-Petersson幾何」の研究に必要な知識をほぼ身につけることが出来たと思っている。今後、この方面の研究も手掛ける予定である。
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