2002 Fiscal Year Annual Research Report
重いクォーコニウム系の物理量の精密計算と新しい理論的枠組の構成
Project/Area Number |
14740147
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
隅野 行成 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (80260412)
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Keywords | 摂動QCD / クォーコニウム / QCDポテンシャル / 高次補正 / リノーマロン |
Research Abstract |
私の今年度の研究成果は、(1)ボトモニウム・スペクトルの新しい計算を行なったこと、(2)QCDポテンシャルの摂動計算と格子QCDの計算との結果の比較を行なったこと、及び、(3)リノーマロン相殺を考慮すると、摂動計算でQCDポテンシャルがクーロンポテンシャルと線形ポテンシャルの和で表せることを示したこと、が主なものである。(1)においては、ポトモニウム・スペクトルの摂動QCDによる計算で、微細構造の予言に対して、新たに全てのΟ(α^5_sm_b)補正を取り入れた。この結果、従来実験値とあまり一致が良くなかった微細構造の予言が、良く合うようになることを示した。(2)においては、クォークのフレーバー数がゼロの場合に、QCDポテンシャルの格子QCDの計算とリノーマロン相殺を取り入れた摂動計算とが、(摂動計算の不定性の範囲内で)r【less than or similar】(130MeV)^<-1>の領域で良く一致することを示した。今まで知られていた他の摂動計算に基づく方法と比べて、はるかに大きなrまで安定な予言ができることを示した。また、(1)で用いた摂動計算の方法の正当性を確かめたことになる。(3)においては、リノーマロン相殺を考慮した上でQCDポテンシャルの摂動計算の適当な極限を調べると、QCDポテンシャルがクーロンポテンシャルと線形ポテンシャルの和として表せることを示した。QCDポテンシャルがこの形で良く近似できることは、従来から経験的に知られていたが、初めてこの形を解析的に導出した。特に、従来、線形ポテンシャルは摂動計算では出せないと言われていた。より高次の補正を取り入れると、より大きなrまで格子QCDの計算との一致が良くなることを示した。
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