2002 Fiscal Year Annual Research Report
安定核から不安定核にいたる閉殻構造の破れの統一的記術
Project/Area Number |
14740176
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
宇都野 穣 特殊法人日本原子力研究所, 物質科学研究部, 研究員 (10343930)
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Keywords | 殻模型 / 不安定核 / 変形 / 魔法数 / 有効相互作用 |
Research Abstract |
N=20領域の不安定核で魔法数が消滅する原因について、従来は主として変形に伴う相関エネルギーの立場から捉えられてきたが、本研究では核力に起因する一粒子エネルギーの変化が及ぼす影響の立場から詳しく調べた。束縛エネルギーの系統性から、これまでは^<30>Naの基底状態においてN=20の殻ギャップを越えた配位は支配的ではないと考えられてきた。しかし、本研究における精密な殻模型計算の結果、基底状態の電磁モーメントおよび近年測定された基底状態から強くE2遷移する状態の存在から、この原子核が従来の予想に反し魔法構造(閉殻構造)を破って大きく変形した基底状態を持つことを示した。さらに、^<30>Naにおける魔法構造の消滅が核力のもたらす有効一粒子エネルギーに対し、どのような理論的制約を与えるかを調べた。その結果、魔法構造が消滅する他の原子核よりN=20のギャップが狭まっていなければならないことがわかった。これは模型に強く依存する議論ではなく、N=19核とN=20核の相関エネルギーを比較することからも定性的にわかる。この成果はアメリカ物理学会で口頭発表され、近く論文にまとめられる。 閉殻構造が破れた状態は安定核では励起状態に見られるが、これを理論的に研究するにはこれまで採用していた模型空間をより広げる必要がある。安定核では不安定核と異なり陽子の励起も考慮する必要性から要求されるのだが、こうしたさらに大きな配位空間における殻模型計算が現実的な速度で遂行できるための計算コードの改良を行っている。さらに、この空間での有効相互作用の研究も着実に行っている。これらは引き続き来年度の課題として取り組む。
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