2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14740188
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石川 忠彦 東京工業大学, 火山流体研究センター, 助手 (70313327)
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Keywords | 量子常誘電性 / 光誘起現象 / 外場制御 |
Research Abstract |
本年度は強誘電的性格を持つ酸化物として、量子常誘電性を持つSrTiO_3を対象として研究を行った。この物質は強誘電体として有名なBaTiO_3と同様の結晶構造を持つ物質である。誘電率の値は温度の低下と共に増大するが、強誘電相転移は起こさず、低温で一定値をとる。このことから、低温での物性は量子揺らぎによって支配されているのではないかと注目されている。 我々はこの物質の光伝導現象に注目した。バンドギャップを超えた電子励起を起こすように紫外光を照射すると、量子揺らぎが支配的な低温領域において、巨大な光伝導効果を発現する。この量子常誘電状態は、酸素同位体置換というわずかな摂動により容易に壊され、量子強誘電相が発現する。この際、光伝導現象も著しく抑制されることを見出した。この光伝導現象の抑制は量子常誘電状態の消失との密接な関連を示唆していると考えており、そのメカニズムの解明に向けて様々な実験を計画、実施している。 現在までにわかっていることを述べると、○光励起によって作られたキャリアは電子型の性格を持ち、酸化物としては極めて移動度の高いものである。 ○この高い移動度を背景として、低温において非常に大きな正の磁気抵抗効果を発現することを見出した。また、O18置換体においては、そのような大きな磁気抵抗効果は見られず、移動度が大きく抑制されていることが示唆される。 外場制御に関してはまだ端緒についたばかりであるが、電場、圧力により誘電的性格を制御することにより、光伝導現象も制御可能であることを示唆する実験結果が得られている。 このことから、来年度において時間分解的手法をもちいた研究を実施することにより、より興味深い結果が得られるものと期待している。
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