2002 Fiscal Year Annual Research Report
金属酸化物表面におけるステップの熱力学・動力学的性質の解明
Project/Area Number |
14740191
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
須藤 孝一 大阪大学, 産業科学研究科, 助手 (90314426)
|
Keywords | 表面 / 金属酸化物 / ステップ / 走査トンネル顕微鏡 |
Research Abstract |
今年度は、金属酸化物の典型例としてSrTiO_3(001)表面における原子ステップ形態の熱力学的性質を超高真空走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて調べた。試料として(001)からの傾斜角度が0〜7^0のSrTiO_3(001)微傾斜基板を用いた。熱平衡状態におけるステップの形態を調べるために、試料は超高真チャンバー内で700〜1000℃の範囲で長時間加熱した後、室温でSTMにより表面の観察を行った。STM観察結果より、表面は常にTiO_2面で終端されていることが分かった。また、SrTiO_3(001)表面のステップ形態は、加熱条件やステップ密度に依存して著しく変化することが分かった。STM像からテラス幅分布を評価し、ステップ間の相互作用について調べた。その結果、ステップ間には長距離で働く反撥相互作用と短距離で働く引力相互作用が存在していることが明らかになった。傾斜角度が2^0以下の表面ではステップ間の反撥的な相互作用が支配的となり、800℃以下ではステップは凝集せずに1原子層ステップ列が形成される。加熱温度が低い場合には、非常に分散の小さいテラス幅分布を持つ表面が得られた。一方、傾斜角が大きくなりステップの数密度が高くなると、ステップ間の引力的な相互作用のために凝集したステップが観察された。また、傾斜角の小さな基板の場合も、900℃以上で長時間加熱すると、ステップの熱揺らぎによってステップ同士の衝突が頻繁に起こるようになり、ステップ束が形成されるようになる。いずれの試料についても、一旦形成されたステップ束は非常に安定であり、700〜1000℃での加熱ではステップ束は分解されなかった。今年度行った一連の実験結果より、SrTiO_3(001)表面ではステップが凝集した状態が最安定であり、一原子層ステップで覆われた表面が準安定な状態であることが明らかとなった。
|