2002 Fiscal Year Annual Research Report
磁束回折格子とミリ波を利用した高温超伝導体における誘電関数の解明
Project/Area Number |
14740201
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
掛谷 一弘 筑波大学, 物質工学系, 講師 (80302389)
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Keywords | ジョセフソン磁束 / 誘電関数 / ジョセフソンプラズマ / Bi2212 / 交差磁束格子 |
Research Abstract |
本研究はBi2212などの層状性の強い超伝導体において層方向に磁場を印可した際に生じるジョセフソン磁束が広い温度範囲で規則的に配列することを利用して、試料中を伝搬するジョセフソンプラズマ波の波数をコントロールし、高温超伝導体の誘電率を波数、周波数の関数として求めることを目標としている。本研究の申請時にはジョセフソン磁束格子振動とジョセフソンプラズマ波の相互作用についての理解がまだ不十分であったので、本年度はこれを体系的に理解することを試みた。既知の実験結果として、Bi2212のab面に平行な磁場においてマイクロ波領域に2つの共鳴モードが観測されることがわかっており、ひとつは零磁場より観測されて磁場の増加に伴って周波数を増加させていく高周波モード、もう一方は有限磁場より観測されて磁場の増加によりわずかに周波数を減少させていく低周波モードである。これらの実験はジョセフソン磁束系の平衡状態で行うことが重要であり、超伝導転移温度以上で磁場を固定した後に温度掃引によって得られた共鳴から求められるべきである。これまでの測定データのうち、20GHz以下の低周波、70GHz以上の高周波では測定が簡便な磁場掃引により得られていたが、測定法を改良することですべての温度範囲で温度掃引による測定が可能となった。また、20K以下の低温で磁場を変化させ、磁束系の非平衡状態を実現させて温度掃引を行ったところ、高周波モードは全く変化が無かったが、低周波モードは強度が非常に弱くなり、プラズマ周波数が低周波にジャンプしていることが示された。低温では交差磁束格子によるピン止めのためジョセフソン磁束は規則的な格子を形成しにくいことが予想されているので、この結果は低周波モードがジョセフソン磁束の配列に敏感であることを示しており、これまで未解明であった低周波モードの起源に大きなヒントを与えると思われる。
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Research Products
(1 results)