2002 Fiscal Year Annual Research Report
パイロクロア型希土類酸化物におけるスピンアイス状態の動的磁気挙動の研究
Project/Area Number |
14740214
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
松平 和之 九州工業大学, 工学部, 助手 (40312342)
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Keywords | パイロクロア酸化物 / フラストレーション / スピンアイス / 交流磁化率 / 磁気緩和 / 置換効果 / カゴメアイス |
Research Abstract |
今年度は以下の研究成果が得られた。 1.スピンアイス化合物Dy_2Ti_2O_7の磁場中における新しい巨視的に縮退した基底状態 Dy_2Ti_2O_7はゼロ磁場、極低温下において巨視的に縮退した基底状態(スピンアイス状態)となり、残留磁気エントロピーを持った状態になる。このスピンアイス状態に結晶の主要軸の一つ[111]方向に磁場を印可することにより、カゴメ格子上において新しい巨視的に縮退した基底状態が実現していることを磁化および比熱の測定から明らかにした。つまり、磁場を印可することにより3次元的な巨視的縮退から2次元的な巨視的縮退へ変化することを見いだした。このカゴメ格子上における新しい巨視的に縮退した基底状態を"カゴメアイス"と名付けた。 2.スピンアイス化合物Dy_2Sn_2O_7の極低温下における動的磁気挙動 新しい磁気状態であるスピンアイス状態の磁気緩和現象を調べるために、多結晶試料Dy_2Sn_2O_7の極低温下での交流磁化率を行った。Dy_2Sn_2O_7は以前行った多結晶試料Dy_2Ti_2O_7の結果と同様に磁気緩和におけるクロスオーバーを示すことが明らかとなった。一方、クロスオーバーにおけるスピンの緩和はDy_2Sn_2O_7の方がDy_2Ti_2O_7よりも遅いことがわかった。この類似性と相違について現在解析中である。 3.Dy_2Ti_2O_7のスピンアイス状態におけるGd置換効果 スピンアイスの出現条件である強い1軸磁気異方性を磁気異方性が等方的であるGdで置換した系について交流磁化率の測定を行った。10%程度のGd置換により高温の動的異常は消失した。単一サイトの磁気異方性から起因すると思われる高温の磁気緩和時間の温度依存性には変化は見られず、クロスオーバー領域以下の温度でスピンの緩和がGd置換により急速に速くなることがわかった。これは等方的なスピンとの相関により、スピン反転が促進されていることを示唆している。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 門脇 広明: "Neutron scattering study of dipolar spin ice Ho_2Sn_2O_7 : Frustrated pyrochlore magnet"Physical Review B. Vol.65 Number 14. 144421(8) (2002)
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[Publications] 松平 和之: "Low-Temperature Magnetic properties of Pyrochlore Stannates"Journal of the Physical Society of Japan. Vol.71 No.6. 1576-1582 (2002)
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[Publications] 松平 和之: "A new macroscopically degenerate ground state in the spin ice compound Dy_2Ti_2O_7 under a magnetic field"Journal of Physics : Condensed Matter. Vol.14 Number 29. L559-L565 (2002)
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[Publications] 広井 善二: "Specific Heat of Kagome Ice in the Pyrochlore Oxides Dy_2Ti_2O_7"Journal of the Physical Society of Japan. Vol.72 No.2. 411-418 (2003)