2002 Fiscal Year Annual Research Report
ランダム競合系のグラス相におけるマージナル安定性とダイナミックス
Project/Area Number |
14740233
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉野 元 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50335337)
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Keywords | ランダム系 / フラストレート系 / スピングラス / 非平衡現象 / 緩和現象 / 統計力学 |
Research Abstract |
本年度の研究ではまず、DPRM系(2次元ランダムポテンシャル中の弾性紐)のグラス相の摂動に対する不安定性についての詳しい解析を行ない、その普遍的な性質、レプリカ対称性の破れとの関連を初めて明らかにした。この研究ではレプリカ法経由して1次元量子系へのマッピングする解析的アプローチを用いて理論的予想を導き、これを強力な数値転送行列法を用いて検証した。その結果、これまで困難な問題とされていた微小な温度変化やランダムポテンシャルの微小な変化などに対する系の平衡状態の不安定性を明らかにすることができた。 次に上記のようなグラス状態の摂動に対する不安定性が非平衡現象にどのように発現するかを現れるかを幾つかの方法で調べた。まずその準備としてEdwards-Anderson(EA)スピングラス模型における急冷後の緩和ダイナミックス(エイジング)の詳しいモンテカルロシミュレーションによる数値実験とスケーリング解析を行なった。また並行してスウェーデンUppsala大学の実験グループとの緊密な研究交流を行ない、典型的な金属スピングラス物質AgMnを用いて行なわれた系統的な実験の結果をスケーリング解析した。その結果、スピングラス転移温度以下でのグラス秩序が微小な温度変化によって長距離スケールで大きく変わり、その結果として緩和が初期化されることが初めて定量的に示された。そこで上記のEA模型においてこれに類似した摂動に対する系の応答を調べ、全く同様のスケーリング解析を行なったところ、整合的な結果を得ることができた。実験的にはこの緩和初期化現象に加えて或る種のメモリー効果が存在することが知られており注目されている。この問題に取り組むために実空間繰り込み群の方法を用いたイジングスピングラスの緩和ダイナミックスの有効模型を考案した。その解析から有意な結果を現在得つつある。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Marta Sales, Hajime Yoshino: "Fragility of the free-energy landscape of a directed polymer in random media"Physical Review. E65. 066131 (2002)
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[Publications] Hajime Yoshino, Koji Hukushima, Hajime Takayama: "Extended droplet theory for aging in short-range spin glasses and a numerical examination"Physical Review. B66. 064431 (2002)
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[Publications] P.Jonsson, H.Yoshino, P.Nordblad: "Symmetrical Temperature-Chaos Effect with Positive and Negative Temperature Shifts in a Spin Glass"Physical Review Letter. 89. 097201 (2002)
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[Publications] P.Jonsson, H.Yoshino, P.Nordblad, H.Aruga Katori, A.Ito: "Domain Growth by Isothermal Aging in 3D Ising and Heisenberg Spin Glasses"Physical Review Letter. 88. 257204 (2002)
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[Publications] P.Jonsson, H.Yoshino, P.Nordblad: "Jonsson, Yoshino, and Nordblad Reply:"Physical Review Letter. 90. 059702 (2003)