2004 Fiscal Year Annual Research Report
薩摩硫黄島の火山活動に伴う自然電位変動に関する三宅島火山との比較研究
Project/Area Number |
14740267
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神田 径 京都大学, 防災研究所, 助手 (00301755)
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Keywords | 火山観測 / 自然電位 / 土砂噴出 / 薩摩硫黄島 / 火口拡大 / 火山灰 / トモグラフィー / 三宅島 |
Research Abstract |
今年度も、薩摩硫黄島火山における自然電位連続観測および傾斜観測を継続して行った。経費の大半は、これらの観測の維持のための消耗品と旅費に充てられた。しかし、夏以降の相次ぐ猛烈な台風の直撃によって、2箇所の観測装置が被害を受け、また、強酸性火山ガスによる腐食のため、計測不能となった。なお、連続観測のための装置は、研究機関終了に伴い撤収した。 昨年度から低調に推移していた硫黄岳の火山活動は、今年度後半にはさらに低調になった。顕著な微動は発生しておらず、有意な電位変動も得られなかった。火口周辺の様子は、2004年10月には昨年度までとほとんど変わっていなかったが、今年度末の観察では大きな変化が見られた。南側の火口縁を除き、堆積していた火山灰が流され、地面が露出した状態に戻っていた。これは、火山灰放出活動がほぼ停止していることを示唆している。火口内は、目視で極短時間観察することができただけだったが、黒色物質が火口底数箇所から噴出されている状況が確認できた。水分を含まない極めて高温の土砂噴出活動と思われる。 硫黄岳山麓から山頂までの自然電位測定の結果、昨年度までとほぼ同じプロファイルが得られた。双極子型ソースを仮定したトモグラフィーも行ってみたが、最近5年間でソースの位置はほとんど変化していない。以上のことから、1998年頃より顕著になった硫黄岳の火山活動は、火口を徐々に拡大してゆく活動であり、現在はほぼ終息状況にあると考えられる。三宅島で観測された傾斜ステップは力学的にも電磁気学的にも観測されなかった。これは地下水の賦存状況の違いを反映していると思われる。硫黄岳山体は一種の溶岩ドームと見なせ、極めて高温のため地下水が地表付近に存在し得ない。従って、三宅島とほぼ同様の火口拡大の活動を行っても、クラックへの地下水の流入は起こり得ず、三宅島のような爆発的活動にもならなかったと考えられる。
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