2002 Fiscal Year Annual Research Report
大気・河川による淡水輸送に対する海洋熱塩循環の依存性とその気候変動への影響
Project/Area Number |
14740273
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
羽角 博康 東京大学, 気候システム研究センター, 助手 (40311641)
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Keywords | 海洋海洋熱塩循環 / 淡水フラックス / 海面境界条件 / 海洋大循環モデル |
Research Abstract |
降水・蒸発・河川流出の客観解析および観測データからなる海面淡水フラックスの気候値データを用い、海面での観測塩分値への緩和を行うことなく全球海氷-海洋大循環モデルを駆動し、全球規模海洋熱塩循環の再現を試みた。このような目的で使用する海洋大循環モデルの水平解像度は、現状の計算機性能の下では1°程度が限界であるが、その程度の解像度では全球規模海洋熱塩循環の起点となるグリーンランド海と北極海・大西洋をつなぐ循環を十分に再現することができず、観測海面塩分値への緩和を行わない場合にはそのような解像度で全球規模海洋熱塩循環を再現することはできないこと、したがってとくにフラム海峡での海水交換を表現することができるように少なくともグリーンランド海周辺においてはより高い解像度が必要とされることが示された。北半球高緯度域を高解像度化し、グリーンランド海周辺の海洋循環を十分に表現することができるモデルを用い、海面淡水フラックス境界条件としてNCEPおよびECMWFという一般に広く用いられている客観解析データセットから作成した気候値を与える実験を行い、海面淡水フラックスデータセットに存在する不確定性が全球規模海洋熱塩循環にどの程度の影響を与えるかを調べ、ふたつのデータセット中のどの領域のどのような違いがどの程度のインパクトを持っているかを調べるための感度実験を行った。計算された大西洋深層循環の強度は海面淡水フラックスデータセットの違いによって50%以上も異なり、その中でも特に北大西洋高緯度から北極海にかけての河川流出量を中心とした淡水フラックスのわずかな違いが大きなインパクトを持って大西洋深層循環に影響を与えることが示された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Hiroyasu Hasumi: "Modeling the global thermohaline circulation"Journal of Oceanography. 58(1). 25-33 (2002)
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[Publications] Hiroyasu Hasumi: "Sensitivity of the global thermohaline circulation to interbasin freshwater transport by the atmosphere and the Bering Strait throughflow"Journal of Climate. 15(17). 2516-2526 (2002)
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[Publications] Yoshiki Komuro, Hiroyasu Hasumi: "Effects of surface freshwater flux global thermohaline circulation"Journal of Geophysical Research. 108(C2). 29(1)-29(13) (2003)
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[Publications] 羽角 博康: "海洋大循環モデリングを主体とした気候システムの研究"海の研究. 11(5). 549-560 (2002)
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[Publications] 羽角 博康, 中野 英之: "北太平洋中・深層循環変動のモデリング"月刊海洋号外. 32. 183-188 (2003)