2003 Fiscal Year Annual Research Report
金属クラスターのフラーレン内部での高速回転の制御に関する理論研究
Project/Area Number |
14740329
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
小林 郁 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (30285093)
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Keywords | La_2@C_<80> / 有機ケイ素化合物 / 化学修飾 / 内部回転 / 運動制御 / スピン密度 / N@C_<60> / ホストーゲスト |
Research Abstract |
我々はこれまでに、C_<80>フラーレンの内側で2つのLa原子が室温で高速に回転することを、理論予測と実験から明らかにしてきた。このランダムな回転を、二次元や三次元運動に制御し、特定方向への磁場や電流を新しく発生させることは、磁気デバイスや光スイッチへの応用の観点からも興味深い。昨年度は、有機ケイ素分子をフラーレンの外側から化学修飾することによって、内包されたLa原子の回転を一定方向の円運動に変換できることを明らかにした。 本年度は、まずLa_2@C_<80>の還元に着目し、付加反応を施すのではなく、フラーレンの外側から電子を与えてアニオンにすることによっても、同様のLa原子の回転制御が可能であることを示した。このことは、最近のESR実験でも確認されている。付加反応を用いた運動変換に関しては、内包クラスターをLa_2からSc_3Nにするとどのような変化が起こるかを、現在検討中である。また、フラーレンに内包されている原子を金属から典型元素に変えても、フラーレンの外側に付加した有機分子が、内包原子の性質を大きく変えることを見出した。例えば、量子コンピュータや医療機器への応用が期待されているN@C_<60>やP@C_<60>では、有機ケイ素誘導体にすると内包されたNやP原子のスピン密度が大きく増加することを明らかにした。このように、フラーレンの外側から、直接触れることなく内包原子の性質を変換する方法は、フラーレン類やホストーゲスト分子を活用するための新しい開発手法として期待できる。
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[Publications] K.Kobayashi, S.Nagase: "Theoretical Calculations of Vibrational Modes in Endohedral Metallofullerenes : La@C_<82> and Sc_2@C_<84>"Molecular Phys.. 101. 249-254 (2003)
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[Publications] K.Kobayashi et al.: "La_2@C_<80> : Is the Circular Motion of Two La Atoms Controllable by Exohedral Addition?"Chem.Phys.Lett.. 374. 562-566 (2003)
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[Publications] K.Kobayashi, S.Nagase, P.-K.Dinse: "A Theoretical Study of Spin Density Distributions and Isotropic Hyperfine Couplings of N and P atoms in N@C_<60>,P@C_<60>,N@C_<70>,N@C_<60>(CH_2)_6,N@C_<60>(SiH_2)_6"Chem.Phys.Lett.. 377. 93-98 (2003)
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[Publications] Z.Slanina, K.Kobayashi, S.Nagase: "Ca@C_<72> IPR and non-IPR Structures : Computed Temperature Development of Their Relative Concentrations"Chem.Phys.Lett.. 372. 810-814 (2003)
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[Publications] T.Wakahara et al.: "A Comparison of the Photochemical Reactivity of N@C_<60> and C_<60> : Photolysis with Disilirane"Chem.Commun.. 2003. 2940-2941 (2003)
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[Publications] M.T.H.Liu et al.: "Effect of Substituents on the Thermal Decomposition of Diazirines : Experimental and Computational Studies"J.Org.Chem.. 68. 7471-7478 (2003)
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[Publications] 小林郁, 永瀬茂: "第5版 実験化学講座 12巻 計算化学(分筆)"丸善(日本化学会)(印刷中). (2004)