2002 Fiscal Year Annual Research Report
新規キラル多フッ素化サレン触媒の合成と効率的不斉C-H結合酸化反応の開発
Project/Area Number |
14740397
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
入江 亮 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (70243889)
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Keywords | ポリフルオロサレン錯体 / ルテニウムビスアセトにトリル錯体 / 光活性化 / ジアゾ酢酸エステル / エポキシ化 / 過酸化水素 |
Research Abstract |
不斉C-H結合酸化反応は、有機合成化学に残された重要な課題の一つである。本研究者らはこれまでに、キラルなサレンマンガン錯体を用いてベンジル位メチレン基の高エナンチオ選択的ヒドロキシル化を報告している。しかし、触媒回転率は極めて低く、真に効率的な反応の実現に向けて高選択性と高活性を兼ね備えた触媒の開発が強く望まれる。そこで、配位子上にフッ素原子を多数導入したキラルなポリフルオロサレン錯体を設計した。この種の金属錯体では、フッ素原子の高い電気陰性度によって配位子の耐酸化性が強化されると共に反応性の向上も期待され、トータルとして高い触媒活性が実現されるものと考えられる。この戦略に基づいて、合計18個のフッ素原子を導入したキラルサレン配位子を合成した。この配位子からマンガン錯体を合成し各種不斉C-H酸化を試みたが、予想に反して反応条件下で触媒が容易に分解するために目的生成物の収率は極めて低いものであった。次に中心金属の効果を検討したところ、ルテニウム(II)ビスアセトにトリル錯体が各種酸化反応を効率良く触媒することを見出した。特に、過酸化水素-尿素付加体(UHP)を酸化剤として、シリルエノールエーテルの酸化が室温にて収率良く進行することが分かった。一方、この条件下ではスチレンなどのオレフィンは反応しないが、錯体をジアゾ酢酸エステル存在化で可視光照射した後にUHPを加えるとエポキシ化が定量的に進行することを見出した。ジアゾ酢酸エステルは全てマレイン酸エステルに変換されるが、光照射によりこの過程が加速されていることを明らかにした。これら酸化反応のエナンチオ選択性は未だ極めて不十分であるが(10〜20%ee)、触媒活性は高く1mol%の触媒量で反応は円滑に進行する。目的とする効率的な不斉C-H結合酸化の開発には至っていないが、ポリフルオロサレンルテニウム錯体の特異な触媒機能を見出すことができた。
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