Research Abstract |
1.環境分析や医療分析のために使用可能な親水性アニオンのためのセンサーが必要とされているが,親水性アニオンに対して優れた選択性をもつニュートラルキャリヤの報告例は少ない。そこで,優れた親水性アニオンセンサーを開発することを目的として研究を行った。昨年度は,1分子中にチオ尿素部位を4つ含む化合物を合成し,ニュートラルキャリヤとして用いたが,優れた性能は示さなかった。今年度は,さらに多くのチオ尿素部位をイオン感応膜中に含有させるため,シリコーンゴム膜,ゾルーゲルガラス膜にニュートラルキャリヤを化学結合し,そのセンサー性能について検討した。 2.ニュートラルキャリヤとして,1分子中に,トリアルコキシシラン部位と1つまたは2つのチオ尿素部位をそれぞれ含む化合物を合成した(それぞれ1,2)。その後,この化合物をシリコーンゴムまたはゾルーゲルガラスに化学結合したイオン感応膜を作製し,イオンセンサー特性について検討を行った。また,生体試料中での測定を想定し,溶液のpHを7付近に保つための緩衝剤も検討した。 3.1をシリコーンゴムに様々な割合(0,10,15wt%)で結合したイオン感応膜を作製し,硫酸イオンに対する電位応答を検討した。1を15wt%含む膜は,低濃度での応答感度が低かったが,高濃度ではほぼネルンスト応答を示した。しかし,同じセンサーを再度測定に用いると,電位応答の傾きが小さくなり,1つのセンサーを繰り返して使用できないことがわかった。また,1,2をゾルーゲルガラスに様々な割合(0〜100wt%)で結合したイオン感応膜は,どちらの化合物を用いた場合でも硫酸イオンに対してほとんど応答を示さなかった。これは,膜材料にニユートラルキャリヤを化学結合することで,膜中のニュートラルキャリヤの易動度が低下したためと考えられ,ニュートラルキャリヤに長鎖アルキル鎖を導入することで改善が可能であると思われる。また,いずれの膜材料を用いた場合でも,緩衝剤としてはHEPESが適していることがわかった。
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