Research Abstract |
本年度は,群れの空間構造を記録するために必要となる,基礎的な調査を行った.GPSで測定した位置情報を自動的に記録するための機器を実際に野外で使用できるよう改造等を施すと共に,自動記録に必要なプログラミングを行った.また調査地で実際にサルを追跡しながら測定を行い,測定誤差,衛星の補足率等を明らかにした.この結果,この方法が実用に耐えることが明らかになった.ただし,やや古い機材のため電池を含めた総重量がやや重くなり,急峻な山の中で使用する上での欠点も見つかった.今後,改善するべき課題である. さらに,予備的な調査を行い,野生のニホンザルを対象に,以下の2つの方法でデータを取った. 1)群れのできるだけ多くの個体の位置を短時間の間に測定する. 一名の観察者が特定の個体を追跡し,もう一名の観察者が,約15分の間にできるだけ多くの個体を探し,その位置を記録した. 2)群の特定の個体を連続して追跡し,その相対位置を測定する. 二名以上の観察者が特定の個体を追跡し,個体の位置と行動を連続記録する. 1)の方法は,短時間に多くの個体の位置を把握することによって,群れの個体の分布の全体像を把握するのに有用である.しかし,遠くにいる個体を見落としやすくなったり,短時間とは言え,測定の時間的なずれが誤差の原因になる,などの可能性が否定できない.2)の方法は,群れ全体の分布を把握するのは困難だが,時間的な誤差がほとんどなく,個体同士が大きく離れても記録できるという利点がある.これら2つの方法を組み合わせることで,相補的なデータを取ることを試みた.現在,結果を解析中であるが,両者の挙動を合理的に説明できる単純なモデルの構築には至っていない.今後,両者を統一的似に説明できるモデルを構築すること,さらにデータを増やすことが課題である.
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