2002 Fiscal Year Annual Research Report
デモグラフィーにもとづいた種間相互作用系ネットワークの群集生態学
Project/Area Number |
14740423
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
星崎 和彦 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助手 (30322655)
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Keywords | 森林動態 / 更新 / 間接相互作用 / 種子捕食 / ネズミ / タンニン / サポニン / マスティング |
Research Abstract |
森林群集におけるさまざまな種間相互作用のうち、森林の更新に重要な相互作用を抽出する目的で、過去の調査データから堅果類の生産量とそれらの実生の発生数、および堅果の捕食者であるネズミ類の個体数の関係について検討した。主な研究ターゲットにトチノキを選び、種間相互作用の重要性を評価することにした。その結果、堅果(トチノキ・ブナ・ミズナラ)の種子生産量は種ごとに年変動パターンが異なり、ブナ、ミズナラの種子生産には大きな年変動が認められたが、トチノキでは豊凶がなかった。トチノキ実生の発生数は種子生産の変動に比べて大きな年変動パターンを示したが、種子生産量と実生発生数の間に密接な関係はなかった。これらのことから、トチノキの種子とネズミの間には他種の種子生産を介した間接作用がはたらいていると予想された。 堅果のネズミにとっての質を評価する目的で、上記3種類の堅果の栄養価と防御物質を定量した。ブナは脂肪分に富み、重量あたりのエネルギーが3種の中で最も高かった。ミズナラとトチノキは重量あたりのエネルギーは同程度であるが、化学防御体制が異なっていた。すなわち、ミズナラはタンニンを10%前後(乾重比)含んでいたのに対し、トチノキは1%強しか含んでいなかった。逆にトチノキにはサポニンが4%強含まれていた。サポニンは他の2種では検出されなかった。またブナには化学的防御物質が含まれていなかった。これらのことから、ブナの種子は栄養価に富むだけでなく防御物質ももたないため、他の堅果よりネズミにとって価値の高い餌であることが確認された。今後、これらの種子の豊作がネズミの生理状態や繁殖に及ぼすポテンシャルを飼育実験も交えて解析する必要がある。
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