2002 Fiscal Year Annual Research Report
タンポポの在来種-西洋種種間競争の送粉生態学的解明と在来種の保全
Project/Area Number |
14740427
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
香取 郁夫 近畿大学, 農学部, 講師 (00319659)
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Keywords | 訪花頻度 / 結実率 |
Research Abstract |
京都府京田辺市の木津川河川敷にて、4月から5月にかけて在来種タンポポの純群落の訪花昆虫相を調査した。この地は典型的な農村地帯である。その結果,当調査地では訪花昆虫のほとんどを膜翅目ハナバチ上科が占め全訪花観察数の80%以上に及んだ。ハナバチ上科の主なグループとしては、ヒメハナバチ科,コハナバチ科が優先し,セイヨウミツバチ、ツヤハナバチ、ハキリバチ,キマダラハナバチ類が後に続いた。他の膜翅目としてはヒメアリ,ツチバチなどが訪花した。その他の目は非常に少数で、双翅目のヒラタアブ類やキンバエなどが見られたが、鱗翅目はほとんど見られなかった。概して、当調査地での在来タンポポの訪花昆虫は豊富で、順調な種子生産と繁殖が見込まれた。今後、都市部でも同様の調査を行い、訪花昆虫相とその頻度、タンポポの結実率を比較する必要がある。 次に、在来種と西洋種の混生群落において在来種が西洋種に訪花昆虫を奪われたり、在来種内送粉が妨げられるなどして、在来種の繁殖に悪影響が出ているかどうかを調べた。具体的な方法として、野外における在来種純群落と在来種西洋種混生群落との間で在来種の結実率を比較した。調査地は奈良県大和郡山市郡山城、奈良市平城京跡、生駒市南部の田園地帯2ヶ所の計4ヶ所で、いずれの調査地においても在来種純群落と混生群落が近接していた。調査の結果、すべての調査地において混生群落の結実率は近接する純群落のそれよりも有意に低く、その差は10〜25%に及んだ。この結果は、混生群落において送粉者を介して西洋種が在来種に何らかの悪影響を与えていることを強く示唆しており、本研究の根本となる仮説がまず1つ実証されたことを意味している。
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