2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14740475
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Natural History |
Principal Investigator |
出川 洋介 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 技師(研究職) (00311431)
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Keywords | 分類 / 生物学的種 / 種概念 / 生物地理 / 生殖隔離 / 温度適性 / 菌類 / 隠蔽種 |
Research Abstract |
1 北海道大学で開催された日本菌学会第47回大会において昨年の成果について発表した(出川・Gams.W.,交配実験による欧州産 Mortierella capitata (Actinomortierella節)のネオタイプ指定)。2 北海道(札幌市、旭川市)において土壌サンプリングを実施し、M.capitataを分離して、温度適性・交配について検討した結果、全てが温帯生C群であった。3 筑波大学菅平高原実験センターにおいて、M.capitataの交配菌株9株及び同種の属すActinomortierella節の2未記載種について分子系統解析を実施した。適用菌株は以下の9株である:(1)昨年度の欧州調査において分離されたM.capitataのネオタイプ指定予定菌株(ベルギー産);(2)M.capitata(上田市産);(3)同(ノースカロライナ産);(4)同(串本町産);(5)M.vesiculosaタイプ菌株(インド産);(6)M.capitata(竹富町産);(7)同(カリフォルニア産)および(8)Actinomortierella節の未記載種[1].(長野県産);(9)未記載種[2](東京都産)である。これらについて、rDNAのITS領域(ITS1,ITS2、および5.8S rDNA)の塩基配列決定をし、PAUPにより系統解析を行った。その結果、(3)を除く8菌殊について塩基配列が決定され、以下のことが明らかとなった。(1)ITS領域の塩基配列は、M.capitataの二つの種内交配群において明瞭に異なっていた。即ち温帯に分布するC群((1)(2)(4))と、亜熱帯から熱帯に分布するW群((5)(6)(7))とは、それぞれ3株ずつがクレードをなして明瞭に区別された。(2)これらは単系統群をなし、Actinomortierella節の未記載種2種((8)(9))その外群として位置付けられたが、属内の種間関係を解析するには18SrDNAなど、より変異速度の一低い分子種の適用が必要と考えられた。以上のことから、M.capitataの二つの種内交配群は、交配、分布、温度適性に加え、分子系統学的にも明瞭に区別されるため、これらは独立種として扱い、分類学的措置をとるのが妥当であるとの結論に至った。
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