2002 Fiscal Year Annual Research Report
Si酸化膜表面におけるポテンシャル分布のnc-AFMによるナノスケール測定
Project/Area Number |
14750225
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江口 豊明 東京大学, 物性研究所, 助手 (70308196)
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Keywords | 非接触型原子間力顕微鏡 / 接触電位差法 / 原子分解能 / ポテンシャル分布 / 長距離力 / 短距離力 / 単一化学結合力検出 |
Research Abstract |
本研究では、非接触型原子間力顕微鏡(nc-AFM)に接触電位差法(CPD)の機能を付加することで、絶縁体表面の局所領域におけるポテンシャル分布を原子一個の分解能で検出し、その構造と直接対応させつつ、定量的に評価することを目的としている。AFMの分解能を向上させるには、距離依存性の小さい長距離力(ファンデルワールス力、静電気力など)の寄与を減らし、短距離力(化学結合力)のみを抽出すれば良い。我々は、カンチレバーの振幅を可能な限り小さくし、出来る限り鋭利な探針を用いることで、それが達成可能であると考えた。しかし、振幅を小さくすれば当然S/Nの面では不利である。そこで、まず、カンチレバーの振幅検出に用いる光源を高輝度かつ平行性の良いレーザーダイオード光源を用いることで、力の検出感度ならびに検出信号のS/Nを向上させた。さらに、位相検波ループ(PLL)型の励振機構を導入し、振動の安定性を向上させた。また、鋭利な探針形状を保ったまま表面の酸化膜を除去するために、電子衝撃加熱法による探針の高温アニールを行った。この処理に伴い、カンチレバーのQ値が向上し、検出信号のS/Nにも改善が見られた。これらの改良の改良を施したシステムを用いてSi(111)-(7×7)表面のnc-AFM観察を行ったところ、最表面原子(アドアトム)だけでなく、第二層目の原子(レストアトム)を観察することに成功した。この成果はAFMの分解能が走査トンネル顕微鏡(STM)と同レベルに達したことを示すものとして世界的に注目を浴びた。さらに、探針-試料間に働く力の距離依存性を解析した結果、先に述べたような高分解能が得られている条件下では、単一のSi-Si化学結合力が検出出来ていることが明らかとなった。これらの成果は、所期の目的を達成に向けての、十分な下地となるものである。
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