2002 Fiscal Year Annual Research Report
コメットアッセイを用いた都市水環境中のDNA損傷性の動態解析
Project/Area Number |
14750457
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
島崎 大 国立保健医療科学院, 水道工学部, 研究員 (60322046)
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Keywords | DNA損傷 / コメットアッセイ / ナノろ過 / 精密ろ過 / 都市河川 |
Research Abstract |
東京近郊の浄水処理場を対象として、浄水処理における試料水を採取し、コメットアッセイによりDNA損傷性の測定を行った。今年度の測定では高度浄水技術であるナノろ過に注目し、ろ過前後におけるDNA損傷性の消長について検討した。採水は多摩川下流域A浄水場敷地内に設置されているパイロット試験装置で行った。当ナノろ過装置は、前段の精密ろ過膜にUMF2824FAA(三菱レイヨン、ポリエチレン系)、後段のナノろ過膜には高阻止率のES-20(日東電工、芳香族ポリアミド系、公称脱塩率99%)および低阻止率のNTR-7410(日東電工、ポリスルフォン系、公称脱塩率15%)を用いている。運転は0.5MPa以下の低圧条件で行った。流入原水である多摩川河川水、精密ろ過膜透過液、ES-20およびNTR-7410ナノろ過膜透過水をそれぞれ採水し、Sep-pakCSP-800樹脂(Waters製)を用いた固相抽出法により濃縮し、最終的に1000倍濃縮に相当する試料を得た。またMilli-Q水を同様に濃縮し陰性対照とした。濃縮試料40μLをヒトBリンパ球由来Wil2-NS細胞株(大阪HSRRBより分譲、JCRB番号:JCRB9063)の培養液1.0mLと混和して、CO_2インキュベータ内で2時間静置して接触させた後コメットアッセイに供した。その結果、すべての試料について、陰性対照と比較して陽性と判定される有意なDNA損傷が観察された。損傷の強度は[河川水原水>精密ろ過膜透過液>低阻止率ナノろ過膜(NTR-7410)透過液>高阻止率ナノろ過膜(ES-20)透過液]の順となっており、各膜の阻止性能に応じてDNA損傷に寄与する物質群が原水中から除去されていることが示された。一方で、最も高い阻止性能を有するES-20ナノろ過膜の透過液中にも依然としてDNA損傷性が残存していることが確認された。
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