2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14750469
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 雄一郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (90312975)
|
Keywords | 溶接 / 形状的不連続 / 材質的不連続 / 応力-ひずみ状態 / 有限要素解析 / 熱影響部 / 破壊 |
Research Abstract |
建築鉄骨の被害の大半は溶接接合部で起きており,その第一段階である延性亀裂の発生には,形状的不連続と材質的不連続がもたらす,多軸応力拘束とひずみ集中が関与している.そのような箇所はホットスポットと呼ばれているが、ホットスポットの局所的な応力-ひずみ状態を知るには,実験だけでは現状の把握に技術的な限界があり、有限要素解析に頼らざるを得ない.そこで,形状的にも材質的にも不連続な問題に対して,有限要素解析がどこまで有効なのか,どの様な利用法が可能なのかを検証するために,既往の実験に基づいて有限要素モデルを作成し、実験結果と比較することを試みた.解析モデルの作成に関して問題となったのは,溶接部の不規則な形状を如何にして描くか,という点と,溶接部の一律でない材料特性を如何に推案し,如何に適用するかという点である.まず,形状に関しては,溶接部のマクロ試験片の観察結果を基に,母材・熱影響部・溶接金属という区分けで、それぞれの領域を幾何学形状に置換した.材質に関しては,特に熱影響部の応力-ひずみ特性に関する情報が入手困難であるが,実験時の破壊起点付近の局所的な情報として得られるビッカース硬さを最大限活用することとし、既往の研究に基づいて引張強さ・一様伸びを推定した.以上の方法で作成したモデルは,試験体の平均的な特徴を有していると考えられる.実験結果との比較においては,マクロな情報は精度良く再現できたが,ミクロな情報に関しては再現精度が十分に得られなかった.しかし,モデル作成面で,精度を追求するという手法は、問題毎の個別性が強く汎用性がない.そこで,現状のモデル化手法に従って,破壊という観点で最善のケースと最悪のケースを想定し,現実との対応関係を統計的に評価することが有効であると期待され,これに関しては次年度の課題とする.
|