2003 Fiscal Year Annual Research Report
伝統民家におけるバイオクリマティックデザイン手法の総合的評価
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14750494
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Research Institution | 九州芸術工科大学 |
Principal Investigator |
長野 和雄 九州大学, 大学院・芸術工学研究院, 助手 (90322297)
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Keywords | 祝島 / ネリヘイ / 伝統民家 / 集落気候 / 室内気候 / ヒヤリング調査 / バイオクリマティックデザイン |
Research Abstract |
「ネリヘイ」と呼ばれる石塀(石壁)を持つ伝統的住宅が数多く残されている瀬戸内海周防灘に面する祝島において、伝統民家の環境調整性能を検証するため、集落気候および室内気候を観測した。集落気候については2002年夏季から2003年夏季まで計5季にわたり定点観測および移動観測を行い、アスマン通風乾湿計およびビラム式風向風速計を用いて集落全域の温湿度および風向風速分布を実測した。室内気候についてはネリヘイを備える住宅と比較のためRC造住宅を選定し、自己記録式温湿度計により2002年7月から2003年8月まで連続測定した。あわせて島民に対するヒヤリング調査も適宜実施した。 その結果、いずれの季節においても沿岸部より集落内部の風速が弱かった。これはネリヘイが密にかつ複雑に配置されており、集落内部に風が入り込みにくいためであり、ネリヘイによる防風効果が実証された。しかしこれは通風性能の面では不利となり、夏季の集落内部、特にネリヘイに囲まれた部分が高気温を示した。にもかかわらず、島民に対するヒヤリングでは多くの人がネリヘイを備える住宅内部はRC造住宅に比べ夏涼しく快適であると述べていた。今回の室内気候実測の結果からは、ネリヘイ民家内がRC造住宅より必ずしも低温に抑えられたわけではなかったが、ネリヘイ住宅内の日較差は比較的小さく、若干の暑熱緩和効果が認められた。また島民は、数年前まで土葺工法であったネリヘイ住宅では、葺き替え後に夏は暑く過ごしにくくなったと答えていた。土葺工法であるネリヘイ住宅の日最高気温は、葺土のないネリヘイ民家よりも低く抑えられ日較差も小さくなる結果を得ており、この島民の生活実感を裏付けていた。住宅が密集しているため屋根面に注ぐ日射の割合が大きくなり、ネリヘイだけでなく屋根面の断熱性能の違いが室温の結果に大きく影響したと考えられた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 長野和雄, 石井 仁, 堀越哲美, 橋本 剛, 宇野勇治: "山口県祝島集落における「ネリヘイ」の環境調整性能調査 その1 夏季・秋季・冬季における集落気候観測"日本建築学会大会学術講演梗概集(東海). D-1. 603-604 (2003)
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[Publications] 長野和雄, 石井 仁, 堀越哲美, 橋本 剛, 宇野勇治: "伝統的石塀住宅の夏季室内熱環境実測"日本生気象学会雑誌. 40(3). s46 (2003)
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[Publications] 長野和雄, 石井 仁, 堀越哲美, 橋本 剛, 宇野勇治: "瀬戸内島嶼集落における気候観測調査"第27回人間-生活環境系シンポジウム報告集. 173-176 (2003)
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[Publications] Nagano K., Ishii J., Horikoshi T., Hashimoto T., Uno Y.: "Observational investigation of bioclimatic design method of traditional houses with stonewall in windy coastal region of Japan"CIB World Building Congress (Toronto). (発表予定). (2004)