2004 Fiscal Year Annual Research Report
伝統民家におけるバイオクリマティックデザイン手法の総合的評価
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14750494
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長野 和雄 九州大学, 大学院・芸術工学研究院, 助手 (90322297)
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Keywords | アンケート調査 / 集落気候 / ネリヘイ / クド造り / 強風沿海集落 / 日照到達距離 / 複合影響 / 等快適線図 |
Research Abstract |
強風沿海集落である祝島でのアンケート結果から、集落中央部では風が弱く昔からネリヘイ(石塀)やサシイタ(窓部に装備する防風板)が元々少ないこと、室面積の確保や瓦が飛ばないRC造の優位性からネリヘイを備える伝統住宅が減っていること等が示された。居住面では、ネリヘイ・葺土がある場合に夏でも涼しく、先の気候観測結果を裏付けていた。簾や葦簀の使用(機器によらない環境調節)、朝涼み・夕涼み(環境選択行為)などの暑熱耐暑行動がよく行われていたが、ヒヤリングでは最近は少なくなったと回答され、ネリヘイだけでなくこれらの調節行為も減る傾向にあることが示された。 同じ強風沿海集落でも有明海北西岸には、寄棟屋根が鍵状に折れ曲がり、棟がコの字型に配されたクド造りが数多く残る。ほとんどの遺構で屋根谷部が北北東を向くが、気象観測データより夏季の卓越風向は概ね南、冬季は北西であり、むしろ北東から東に屋根谷を向けた方が防風性能は高いことが明らかとなった。一方、現存する22件の軒出・庇高を実測し、オモテへの日照到達距離を算出した結果、採光の観点からは北、次いで北北東に屋根谷を向けた場合が都合よく、北東まで東に振れると冬季の日照導入・夏季の日射遮蔽ともに悪化することが明らかとなった。すなわち、採光と耐風の両面から最もバランスの良い方位となっており、民家の巧みな気候適応性能が明らかになった。 これらの室内での総合的快適性を評価するため、複数物理要素の複合影響実験により新たな等快適線図を作成した。すなわち、22名の被験者を寒冷および騒音に曝露した実験から、気温と騒音レベルから快適度を数量的に表す等値線図を寒冷側に拡張した。男女16名の被験者を光源照度・色温度、気温、周囲色彩の組合せ条件に曝露した実験から、色温度と照度の組合せによる快適範囲を新たに示した。
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Research Products
(5 results)