2002 Fiscal Year Annual Research Report
様々な外部刺激に応答して色変化を示すらせん高分子の合成
Project/Area Number |
14750691
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
前田 勝浩 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 講師 (90303669)
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Keywords | らせん / ヘリックス-ヘリックス転移 / ポリフェニルアセチレン / 誘起円二色性 / 高分子 / キラリティー / コンホメーション / シクロデキストリン |
Research Abstract |
我々は、β-シクロデキストリーン(β-CyD)残基を有する光学活性ポリフェニルアセチレン誘導体(poly-1)が、温度、溶媒、分子の形やキラリティーなど様々の外部刺激に応答してヘリックス-ヘリックス転移を起こし、それに伴い溶液の色が変化するという興味深い現象を見い出している。本研究では、β-CyD残基に変えて、α-,γ-CyD残基およびβ-CyDの水酸基を全てメチル化したMe-β-CyD残基を有するポリアセチレン誘導体(poly-2,poly-3,poly-4)を合成し、CyD環の大きさや水酸基による水素結合の影響について検討した。各ポリマーは,対応するアミノ化シクロデキストリンと(4-カルボキシフェニル)アセチレンの酸クロリドを反応させることにより合成したモノマーをロジウム触媒を用いて重合を行って得た。レーザーラマンスペクトル測定により,いずれのポリマーもシス-トランソイド構造を有していることが確認できた。Poly-2とpoly-3のCDおよび吸収スペクトルをアルカリ水中とDMSO中で測定したところ、ポリマー主鎖の共役二重結合領域に一方向巻きのらせん構造に由来すると思われる誘起CDが観測された。しかし、DMSO中とアルカリ水中では主鎖領域のCDの符号は互いに逆であったことからポリマー主鎖のらせんの向きが互いに逆である可能性が強い。また、溶液の色はDMSO中では赤色、アルカリ水中では黄色であった。従って,poly-1と同様に溶液の色によってらせんの向きを区別することができる。これらのDMSO中でのCDおよび吸収スペクトルの温度変化を測定したところ、温度の上昇とともにCDスペクトルはほぼ対称的なパターンへと変化し、吸収スペクトルは著しい短波長シフトを示した。また、これに伴い溶液の色が赤色から黄橙色へと可逆的に変化した。以上の結果から、poly-2やpoly-3もpoly-1と同様にらせんの反転を伴うサーモクロミズムを示すことが分かった。CDスペクトルの符号が反転する温度つまり,らせんの反転温度は、poly-2<poly-1<poly-3の順に高くなり、側鎖のCyD環のかさ高さとの間に良い相関がみられた。一方、pol-y4についても、DMSO-DMF(1/1)中で、CDの温度変化を測定したところ、可逆的なCDパターンの反転が観測され,らせん反転を起こすことが明らかになった。従って、CyD残基を有するこれらのポリマーがヘリックス-ヘリックス転移を起こす主な要因が、CyDユニット間の水素結合相互作用ではないことが示唆された。
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Research Products
(1 results)