2003 Fiscal Year Annual Research Report
超分子構造を利用した高強度・高弾性率を有する新規セルロース繊維の開発
Project/Area Number |
14750702
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
服部 和幸 北見工業大学, 工学部, 助手 (20333669)
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Keywords | セルロース / セルロース溶媒 / チオシアン酸塩 / エチレンジアミン / 溶解エンタルピー / CP / MAS / 再生繊維 / 水素結合 |
Research Abstract |
セルロースを有効利用する目的で、再生セルロースの新製法および高性能化を詳細に検討してきた。特にセルロースの可溶化に対して、既存の溶媒システムを放棄し、新たにエチレンジアミン、ヒドラジンなどとチオシアン酸塩を用いる系の開発に取り組んできた。 前年度までに行ったエチレンジアミン/チオシアン酸ナトウム溶媒を用いるセルロースの溶解において、溶解機構と溶解速度の向上を検討した。溶解速度は、前述の溶媒-セルロース混合物を-20℃と50℃の環境に交互に繰り返しおくことで、エントロピー効果増大と、セルロース-アミン間の水素結合によるエンタルピー効果増大が協同的に働き、溶解が著しく促進することを見出した。 この時のセルロースの溶解挙動をCP/MAS固体^<13>C NMRで追跡した。天然のセルロースI型を溶解に用いた場合、溶解が進行するに従いセルロースの結晶多形が変遷し、III型を経由して無定形となり、遂には溶媒和していく様子が、吸収ピークの特徴的な位置によって明らかとなった。さらに、ピラノース環4位と6位の化学シフトが溶解とともに高磁場側に移動することから、4位と6位の水酸基の環境が変化していくことが分かった。これらの水酸基は、セルロースI型においてそれぞれグリコシド結合酸素および2位の水酸基と水素結合していることが知られている。すなわち、I型のセルロースが溶解するに連れてこれらの水素結合が選択的に切断され、結晶形が崩壊し溶解していくことが明らかとなった。 また、これらのセルロース溶液を購入した紡糸用ノズルを用いて水中に押し出すことにより、レーヨン様のセルロース繊維を得ることに成功した。前年度のレオロジー的性質を考慮し、異方性溶液から紡糸条件の最適化を計ることで、強度の高いセルロース繊維が得られることが期待させる。以上の結果は、平成15年に行われた第227回アメリカ化学会および国内2つの学会にて発表し、国際誌Polymer Journalに投稿し受理された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] K.Hattori, T.Yoshida, J.A.Cuculo: "Dissolution and Solution Properties of Cellulose in the Amine/Thiocyanate Salt System"Proceedings of the 227th ACS National Meeting. 1. 43 (2004)
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[Publications] K.Hattori, T.Yoshida, J.A.Cuculo: "New Solvents for Cellulose.II : Ethylenediamine/Thiocyanate Salt System"Polymer Journal. 36. 123-130 (2004)
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[Publications] A.D.French, R.M.Brown, H.Chanzy, W.Glasser, D.Gray, K.Hattori: "Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, Chapter on Cellulose"John Wiley & Sons, Inc.. 16 (2003)