Research Abstract |
本研究では,幅広い分野で使用されているディーゼル機関め代替燃料として,ジメチルエーテル(DME)を用いることを検討した.DMEの燃料としての利点という観点では,LPG同様,数気圧の加圧で液化するため運搬方法が簡素化できること,自己着火性の指標であるセタン価が55〜60と高いためにディーゼル機関に適していること,また分子構造として炭素同士の結合がないことから燃焼時にすすがほとんど発生しないこと等の利点がある.その一方で,潤滑性がほとんどないため,燃料噴射ノズルの内部や燃料噴射ポンプのプランジャなどにスカッフィングを引き起こすなどの欠点がある. 本実験では潤滑性を補うために,DMEにA重油を混合して,この混合燃料をディーゼル機関で燃焼させることを試みた.供試機関には横型水冷4サイクル単気筒直接噴射式ディーゼル機関(ボア92mm×ストローク96mm)を使用した.実験条件として,機関回転数は2000rpm一定とし,負荷は5段階(0,16,33,49,65%)に設定して燃焼圧力,排気ガス成分などの機関性能の測定を行った,また燃料噴霧の発達状況を可視化するために,大気圧下に燃料を噴射して高速度ビデオカメラにより撮影をした.DMEとA重油の混合率は,重量割合でDME25%A重油75%,DME50%A重油50%の2種類を試験し,比較のためにA重油100%,軽油100%の運転も行った. 実験より次の知見を得た.(1)加圧下ではDMEとA重油との混合性は良好で,長期間保存しても分離しない.(2)DME・A重油混合燃料の噴霧特性としては,A重油を混合したことにより大幅な噴霧到達距離の減少が起きることなく適度な噴霧角を得られる.(3)DMEを混合すると着火遅れ期間を小さくさせる効果がある.(4)DME・A重油混合燃料を用いた場合,わずかではあるがCO2の削減効果があり,スモークに関しては大幅な削減ができる.(5)DMEとA重油の混合割合は排ガス特性,機関運転性能などを考慮した結果,50%:50%が適している.また,数値計算では,DMEの諸物性をKIVA2コードに適用し,噴霧の分散に関して計算を行った.その結果,実験で得られたような噴霧角の増大の傾向が計算でも再現された. 以上の研究結果より,DMEをディーゼル機関に適用する場合,潤滑性を補うためにA重油と混合するのは有効であると結論した.
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