Research Abstract |
作物根系における「可塑性」の発現には,側根の発生・伸長が大きく関与している.しかし,側根の生長についての生理学的見地からの解明が十分でない.本研究では,根系の形態変化に要する,光合成同化産物を中心とした物質の分配が側根生長の主要因であると考え,浸透圧ストレス条件下における,トウモロコシ種子根の糖含有量の分布と側根の発生・伸長について詳細に検討した.ストレス処理により,まず根系,その後地上部に,生長阻害が現れた.側根の発生と伸長について詳しく調査すると,ストレス処理前に側根が発生していた部位では,ストレス処理後,顕著に側根の発生および伸長が抑制される傾向が認められた.一方,ストレス処理時に側根が発生していなかった部位では,その後の側根の発生と伸長は,対照区とほぼ同じか,先端側では対照区よりも促進される傾向が認められた.この結果より,浸透圧ストレスに対して,新しく発生した側根は,適応反応を起こしていることが示唆された.そこで,種子根の側根発生部位に蓄積しているGlu,Suc,Flu含有量について調査した.種子根軸上のすべての部位において,Glu含有量が最も高く,次いでSuc含有量,Fluはほとんど検出されなかった.また,基部側より先端側の方が含有量は高く,同一部位で比較すると,播種後日数が少ないほど含有量が高い傾向が認められた.GluとSuc共に,ストレス処理によって各部位で含有量は増加し,特に基部から150mmより先端側の部位(処理1日目)および200mmより先端側の部位(処理2日目)で,対照区との差が大きかった.これらの部位は,その時点では側根が発生していないが,翌日以降に側根が発生し,伸長することが予想される部位であり,GluやSucの蓄積がストレス条件下での側根の発生と伸長,言い換えると可塑性の発現に大きく寄与している可能性が示唆された. また,フローサイトメトリーを用いて,環境変化に伴う核内多倍数性の発生頻度変化の調査を行ったところ,環境要因の変化および加齢に伴い,その発生が大きく変わることが明らかになった. これらの結果を投稿論文としてまとめ,投稿準備中である.
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