2003 Fiscal Year Annual Research Report
新規脂肪酸Δ6不飽和化酵素分子種の単離・同定とその発現制御に関する研究
Project/Area Number |
14760083
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 匡央 九州大学, 大学院・農学研究院, 助手 (90294909)
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Keywords | 多価不飽和脂肪酸 / Δ6不飽和化酵素 / 分離大豆タンパク質 / 制限アミノ酸 / β-コングリシニン / 食事タンパク質 / 脂肪酸の不飽和化 |
Research Abstract |
食事脂肪酸の種類と量は各種の生活習慣病の防御機構と密接な関係を有していることから、細胞内脂質バランスにおける脂肪酸の防御機構が注目されている。アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)などの多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、生体膜の重要な構成成分である。これらPUFAは脂肪酸長鎖不飽和化反応により生成されるが、哺乳類ではこの反応の律速段階は、Δ6不飽和化酵素(D6D)により行われる。D6D活性が栄養環境や個体の生理状態により変化することは多数の研究者によって報告されてきた。さらにこの過程にはΔ5不飽和化酵素(D5D)および別の系列の不飽和化反応ではstearyl-CoA不飽和化酵素(SCD1および2)が関与している。本研究では、高脂血症治療薬であるフィブレート系薬剤、ジェンフィブロジルをラットに投与した実験および肝臓での不飽和化反応を抑制すると報告される大豆タンパク質食を摂食させた実験を行って、それぞれSCD1、D5DおよびD6DのmRNA量の違いを指標として、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の発現の調節する分子種の予測を行った。D6D遺伝子発現の食事およびジェンフィブロジルによる制御の機構を示すとD6Dの脂肪酸不飽和化反応の可能性のある分子は3つに大別される。(1)高度多価不飽和脂肪酸、(2)タンパク質源の違いによる細胞内情報伝達物質および(3)PPARのリガンドである。それぞれの物質は違った段階で制御を行っているようである。本年度の研究は、とくに食事タンパク質に注目して、分離大豆タンパク質(SPI)中の主成分であるβ-コングリシニンのD6D活性への影響をラットを用いて検討した。 D6D活性はβ-コングリシニン>SPI>カゼインの順で低く、β-コングリシニンでの活性抑制作用が強かった。しかし、これはアミノ酸バランスの悪さが影響するものと考えられるので、β-コングリシニンの制限アミノ酸である,トリプトファンおよびメチオニンを添加して同様な実験を行ったところ、β-コングリシニン+Trp+Met>カゼインの順で抑制作用が強く発現した。従って、β-コングリシニン中のアミノ酸以外の何らかの物質が、D6D活性の制御に関わっていると考えられた。
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[Publications] 武田, 實方, 庄司, 佐藤, 佐藤, 今泉: "食餌分離大豆タンパク質がラット脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の発現に及ぼす影響"必須アミノ酸研究. 168. 30-33 (2003)