2002 Fiscal Year Annual Research Report
北方森林生態系における生物多様性の保全・修復を制御する環境要因の解明
Project/Area Number |
14760095
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 俊也 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助手 (60312401)
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Keywords | 掻き起し / 人工裸地 / 植生回復 / 個体群動態 / 種多様性 / 環境要因 |
Research Abstract |
北方森林生態系内に作られた造成後2年目の人工裸地(重機による「掻き起し」施業地)を用いて、遷移初期過程における光・土壌・生物環境の変化と、出現する植生との相互関係を明らかにした。北海道大学雨龍研究林215林班の疎林内に設定した1.96ha(140×140m)の調査プロット内の60ヶ所の調査区において、(1)植生センサス(2回/年)(2)掻き起し強度の推定、(3)土壌試料の採取および窒素濃度等の測定、(4)全天空写真の撮影による光環境推定、(5)種子・リター量計測を行なった。 高木実生の定着、植生の発達状況は、コドラート間でのばらつきが大きかった。植生被覆率は2年目で18.9%であった。重回帰分析の結果は、植物のデモクラフィーに対して光が最も強い影響を持っていることを示した。掻き起し後の林冠疎開地の強度の光環境は、カンバ・キハダなどの陽樹を含む多くの種の発生・生存・成長に負の彰響を及ぼしていた。一方、ヤナギ・ヤチダモといった好湿性の種の発生には土壌環境の重要性が高いことが示唆された。リターの被覆はカンバ・キハダの発生・生存に負の影響を与えていた。これは物理的な被覆や腐朽菌の存在に関係すると考えられる。また掻き起し強度は、カンバ・トドマツ・ミズナラの平均成長量を低下させており、転圧による土壌硬度の上昇が成長の阻害をもたらした可能性が示唆された。高木以外も含めた植物種多様度に対しても、光環境の負の彰響は大きかった。また、掻き起し強度が同様に負の彰響を持っていたことは、萌芽能力や埋土種子が排除されることに関係すると考えられる。樹冠下の条件は、豊富な種子供給に加えて、被陰、非撹乱土壌の保全が合わさった効果を持つことにより、種多様度を高めるものと考えられた。 この他に、同じ雨龍研究林内において、「掻き起し」施業後の年数が異なる複数のサイトを設定し、植生の調査を行なった。
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