2004 Fiscal Year Annual Research Report
海岸マツ林生態系の環境修復をめざした樹木共生菌の探索とその機能解析
Project/Area Number |
14760097
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
松田 陽介 三重大学, 生物資源学部, 助手 (30324552)
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Keywords | 外生菌根 / クロマツ / 海岸 / 形態タイプ / ITS-RFLPタイプ / Cenococcum / 生長促進 |
Research Abstract |
これまでに外生菌根菌(以下、菌根菌)の培養実験を通して塩類耐性菌の選抜を行なってきた。しかし、一般に特定の環境下で有効とされる菌根菌を接種した場合でも野外ではその効果がみられない場合がある。それは接種した菌が、土着菌によって駆逐されてしまうためと考えられている。 したがって、本年度は海岸地域に生息する菌根菌を明らかにするため、天然に更新したクロマツ実生苗に着目して、その根系に形成された外生菌根の形態的、分子生物学的類別を行なった。三重県河芸町の海岸クロマツ林(30×550m)内の12ヶ所から、当年生クロマツ実生(以下、当年生実生)を15個体と1年生以上のクロマツ実生(以下、1年生実生)を14個体それぞれ採取した。それらは顕微鏡観察とDNA解析に用いた。実生を地際で切断後、地上部は105℃24時間乾燥させた後に重量測定を行なった。地下部に形成された外生菌根は実体、光学顕微鏡を用いて観察し、菌鞘表面の菌糸配列組織、クランプの有無などにもとづき形態タイプに類別した。さらに各形態タイプはrDNAのITS領域を対象としたPCR-RFLP解析を行ないRFLPタイプに類別した。その結果、当年生、1年生実生からはそれぞれ11タイプ、15タイプに類別され、合計15タイプの形態タイプが識別された。そのうち、菌根の色や菌鞘表面構造からCenococcum geophilumが定着菌と同定され、その他に未同定担子菌類、チチタケ属菌の感染が推察された。類別した形態タイプは、ITS-RFLP解析によって合計13RFLPタイプに識別された。当年生と一年生実生の1個体の根系に形成された菌根のタイプ数は,それぞれ2.5±0.9,3.4±0.8であった。実生の齢に関わらずRFLPタイプ13かRFLPタイプ3の菌根数、実生への出現頻度が高かった。クロマツ実生地上部の乾燥重量は,全菌根数と強い正の相関関係が認められたが(r=0.865,p<0.001)、タイプ数との間には相関は認められなかった(r=0.167,p=0.385)。
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