2002 Fiscal Year Annual Research Report
麻ひ性貝毒原因渦鞭毛藻のシスト形成に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
14760136
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小檜山 篤志 北里大学, 水産学部, 助手 (60337988)
|
Keywords | Alexandrium / シスト / カルシウム / 細胞分裂 / ディファレンシャルディスプレイ |
Research Abstract |
有毒渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseのシスト形成に関する研究は古くから行われているものの、シスト形成に関与する要因あるいはシスト形成時に起こる細胞内変化については未だ不明な点が多い。そこで本研究ではまず、窒素、リンおよびカルシウムがシスト形成に及ぼす影響について調べた。その結果、カルシウムを添加した試験区でシストが形成され、その濃度に依存してシスト形成数が増大する傾向が示された。また、高濃度のカルシウムを添加した場合はテンポラリーシストの形成が誘導された。従って、シスト形成には細胞内カルシウム濃度の変化が重要であると考えられた。さらに、カルシウムイオンを介したシグナル伝達に重要なカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼのcDNAクローニングを行い、他生物種のものの触媒領域および自己リン酸化部位と類似する演繹アミノ酸配列をコードするcDNAクローンを得ることができた。また、本種は窒素制限下でシスト形成が誘導されることから、細胞分裂の停止が接合を誘導するものと想定し、細胞分裂阻害剤サイトカラシンBの接合に及ぼす影響を調べた。その結果、窒素制限培地で培養した細胞よりも有意に接合細胞数が増大した。このことから、細胞間の接合は、細胞分裂の停止が引き金になっているものと考えられた。さらに、異なる配偶型依存的に発現する遺伝子を得るため、定常期まで培養した異なる配偶型を有する細胞それぞれからRNAを抽出し、簡易ディファレンシャルディスプレイ法に供した。その結果、15個の配偶型特異的と思われるDNA断片が得られた。これらDNA断片の塩基配列を決定してホモロジー検索を行ったところ、1つのクローンの演繹アミノ酸配列がStreptococcus pneumoniaeの分泌性45kDa蛋白質と相同性を有したが、その他のクローンでは他生物種のものと相同性を有する分子を見出せなかった。今後は、今回得た分子について遺伝子発現や一次構造の解析等を詳細に調べる予定である。
|