2003 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀フランスにおける土地所有の動向と民法典相続法の意義
Project/Area Number |
14760140
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
伊丹 一浩 茨城大学, 農学部, 助教授 (50302592)
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Keywords | フランス史 / 民法典相続法 / 農民の戦略 / 土地所有の動向 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、19世紀フランスの土地所有の動向と当時の相続の実態を大まかに把握するために、1866年に行われた全国農業調査を史料として利用し、分析を行い、土地所有の細分化の傾向と、それに伴って農業生産の労働集約化の傾向が見られることを見出した。ついで、土地所有の細分化と現物分割相続の浸透の関連について検討を行い、確かに現物分割相続の影響を緩和するような、結婚による資産再構築の動きであるとか、相続における不動産分割回避に関する戦略的行動も存在するが、総じて、そうした動きは不十分なものであり、全体として、民法典相続法に規定された均分相続は土地の細分化をもたらし、ひいては、農業生産の労働集約化、場合によっては過度の労働強化をもたらしたことを指摘し、そのことを論じた論文が『農業経済研究』に掲載された。 また、これまでの相続史研究を批判的に論じ、フランスの相続を概括的に見た場合、北フランスでは現物分割相続が、南フランスでは一括承継相続が行われているが、仔細に見ると、地域によって民法典相続法の悪影響とそれに対抗するために採られる農民の戦略が存在することを明らかにし、それを受け、北フランス、西フランス、南フランスの農民の相続戦略の分析を行い、19世紀中葉の相続制度の改革において、農民の相続戦略が重要な役割を果たしたことを、これまでに収集した現地の史料と上述の1866年農業アンケートを利用して分析し、『民法典相続法と農民の戦略』と題する学術書を出版した。
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Research Products
(2 results)