2004 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀フランスにおける土地所有の動向と民法典相続法の意義
Project/Area Number |
14760140
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
伊丹 一浩 茨城大学, 農学部, 助教授 (50302592)
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Keywords | 土地所有の細分化 / 一括相続 / 家族構造 / 直系家族 / 傍系家族 |
Research Abstract |
(1)1866年農業アンケートを利用して、オート=アルプ県における土地所有の動向の概要と相続の実態を検討した。他地域と同様に、この県でも土地所有の細分化が進んでいること、それに対抗するかのように所有地の一括相続への傾向が見られることを明らかにした。(2)次いで、オート=アルプ県東部に位置するエグリエ・コミューンについて分析を行った。ここは、人口約750人程度のコミューンで、農業が主な産業であり、耕地やブドウ畑がデュランス川やギル川沿いに存在するが、大部分は放牧地となっているところである。まず、1830年に作成されたエグリエの土地台帳を分析し、10ヘクタール以上といった大土地所有者が1人しか存在しないこと(全所有者数は479人)や、1ヘクタール未満の土地所有者層が約7割を占めることを明らかにし、当地の土地所有が細分化されていることを明らかにした。(3)次に、エグリエの家族構造について、1841年と1846年に行われた住民調査を利用して分析を行った。1戸あたりの平均世帯員数が約5人となっており、北フランスに比べ、1〜1.5人ほど多くなっていることや、二世代の夫婦が同居する直系家族や傍系家族が独身のまま家に残っている拡大家族など、核家族が主流となっている北フランスとは異なる性格を持つものが多く存在していることを明らかにした。(4)これらより、オート=アルプ県では、(1)で見たように一括相続への傾向が見られるが、こうしたことの背景には、(2)で見たように土地所有が細分化しつつある状況の中で、(3)で見たような伝統的な家族形態が強固に残存していることがあるのであって、そうしたものを守っていこうという規範の中で、土地所有の一体性を保持するため、一括相続への傾向が現れてくることを明らかにした。
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