2003 Fiscal Year Annual Research Report
trans-バクセン酸からの共役リノール酸合成経路は存在するのか?
Project/Area Number |
14760174
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
河原 聡 宮崎大学, 農学部, 助手 (30284821)
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Keywords | 共役リノール酸 / trans-バクセン酸 / 脂肪細胞 / ウシ / 生成量 / pH / 生成速度 / 生物水素付加反応 |
Research Abstract |
ウシ脂肪組織から調製した脂肪細胞を用いて、trans-バクセン酸(t-バクセン酸)からのcis9,trans11共役リノール酸(c9,t11 CLA)の生成について検討した。その結果、培地中のt-バクセン酸の添加量に依存して細胞内のc9,t11 CLA含量が増加した。一方、培地中にc9,t11 CLA標品を添加した場合にも、同様に添加量依存的にc9,t11 CLAが細胞内に蓄積した。以上の結果から、ウシ脂肪細胞におけるc9,t11 CLAの蓄積量には、細胞に供給されるCLAおよびt-バクセン酸いずれの量も関与することが示唆された。来年度は、細胞外から供給されるt-バクセン酸が、どの程度の割合で、c9,t11 CLAに変換されるのかを定量的に検討し、脂肪組織におけるCLAの蓄積量に対するt-バクセン酸の寄与度を明らかにしたい。 他方、米国の研究者らにより、ウシにリノール酸を補強した低線維食を与えたところ、乳中のCLA含量が大きく増加したことが報告された。飼料中の粗線維含量や炭水化物含量により、ウシルーメン中のpHが変化することは良く知られている。そこで、ルーメン内pHがルーメン微生物によるリノール酸の生物水素付加反応に及ぼす影響をin vitroにおいて検討した。その結果、正常な発酵状態でのルーメン内pHに相当するpH6.0〜7.0では、リノール酸からc9,t11 CLAが生成する速度より、c9,t11 CLAがt-バクセン酸に変換される速度が速かった。しかし、低線維食給与により引き起こされる異常発酵状態に相当するpH5.5前後の条件では、c9、t11 CLAからt-バクセン酸が生成する反応が強く抑制され、結果的にc9,t11 CLAの生成量が増加した。これらの結果から、ルーメン内におけるCLAの生成量にはルーメン内pHが大きく関与しでおり、ルーメンにおけるCLAの生成量が乳・肉中のCLA含量に何らかの影響を及ぼすことが推測された。
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