Research Abstract |
1. 親子放牧している黒毛和種牛群を供試し,子牛の親和関係の変化について1ヵ月齢から離乳時まで調査した。その結果,母子行動頻度は月齢に伴ない減少傾向を示したが,離乳直前の5ヶ月齢時が最も多くなった。親和行動は月齢に伴ない減少し,社会的遊戯行動はほとんど観察されなかった。さらに,最近接子牛として2ヵ月間連続して観察された組み合わせは,1組ないし2組しか認められず,3ヵ月間連続して有意に観察された組み合わせは全く認められなかった。以上より,親子放牧管理下において,成牛間の親和関係は離乳後から形成し始めることが示唆された。 2. 70頭からなるジャージー種放牧搾乳牛群を供試し,形成可能な親和グループサイズを推定した。その結果,平均親和グループサイズは,5.3頭だった。また,親和個体が存在しなかった調査牛も認められ,最大親和グループサイズは9頭だった。親和グループサイズの増加に伴い,最近接個体間距離が短くなり,また,相互舐め行動時間は長くなった。したがって,グループサイズの増加に伴ない,社会的絆が強くなっていく可能性が示された。さらに,これら親和グループ血縁個体とよりも年齢の近い個体と形成されていた。さらに,5頭まではグループサイズの増加に伴ない乳量も有意に多くなり,6頭以上では一定的となった。 3. 入れ替えのない黒毛和種育成牛群20頭を供試し,それらの社会行動頻度から,親和的積極型個体の抽出を試みた。その結果,代表的な親和行動である相互舐め行動の供与回数,受容回数に明確な個体差の存在が示された。さらに社会行動頻度をもとに主成分分析した結果,親和型積極型,攻撃型,逃避型,孤立型,中間型の5タイプに類型化でき,逃避型,孤立型は親和行動頻度も少なく,親和的消極型とみなせた。加えて,親和的積極型個体の方が消極型個体より日増体量が高く,親和性の違いが家畜生産性に影響することが明らかとなった。
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