Research Abstract |
【目的】 親和行動の発現頻度の多少から牛群を親和的積極型個体と消極型個体の2型に分類し,これら2型の行動的,生理的特徴を社会的新規環境下および非社会的環境下での情動反応から検討した。 【方法】 (1)附属AFCで飼養管理されている黒毛和種育成牛11頭を供試した。行動観察は不特定個体追跡法に従い,延べ60時間,代表的な親和行動である相互舐め行動供与時間を記録した。そして,供試牛を相互舐め行動の多い方(AA),少ない方(AP)から,それぞれ4頭ずつ選び,調査牛とした。(2)社会的新規刺激として,非顔見知りである同品種繁殖牛とヒトに,それぞれ30分間,10分間,パドック内で対面させた。調査牛の行動をビデオで録画し,非顔見知り牛とヒトに対する探査,敵対行動回数,排泄回数,不動化時間を記録した。(3)非社会的環境として,新奇環境に10分間さらした(新奇環境曝露実験)。新奇環境とは調査牛がこれまでに経験したことのない新奇な場所のことである。新奇環境はStarting BoxとTest penで構成されており,周りは高さ2mのコンパネで覆われていた。新奇環境曝露実験終了1週間後に,再び調査牛をTest penに導入し,導入2分後に3mの高さからバケツを落下させ,調査牛をさらに3分間静置した(驚愕刺激実験)。各実験中の行動はビデオで録画し,新奇環境,驚愕刺激に対する探査行動回数,排泄回数,不動化時間を記録した。また,各実験開始15分前から実験終了後まで調査牛の心拍数を記録し,各実験前後に採血し,コルチゾール濃度を測定した。 【結果】 (1)平均相互舐め行動時間は,4767.3±4893.3秒/頭/60hとなり,個体差の存在が再確認された(P<0.001)。さらに,相互舐め行動の多少で類型したAA,APそれぞれ1頭あたりの平均相互舐め行動時間は,872.0秒,10114.8秒となり,有意に異なっていた(P<0.05)。(2)APに比べ,非顔見知り牛に対する逃避行動回数はAAの方が多く(P=0.07),ヒト対面時の排泄回数はAAの方が少なかった(P<0.05)。(3)新奇環境曝露時の行動反応に2型間の有意な差はなかった。一方,驚愕刺激提示時によりAAの不動化時間は大幅に増加し,その増加率はAPより高い傾向だった(P=0.07)。また,有意な差ではなかったものの,新奇環境曝露直後と驚愕刺激提示による心拍数増加率は,AAの方が高かった。そして,心拍反応とは逆に,コルチゾール増加率はAAよりAPの方が新奇環境曝露で有意に高く(P<0.05),驚愕刺激提示で約1.6倍高かった。
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