2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14760213
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
山田 隆志 福山大学, 生命工学部, 講師 (80341204)
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Keywords | 馬尿酸 / ベンズアシド / 微生物 / 代謝 / ペプチドホルモン |
Research Abstract |
馬尿酸は草食動物の尿中に大量に含まれ環境中に排出される有機酸である。ベンゼン環を含む安息香酸がグリシンとアミド結合しており炭素・窒素源を含む単純な構造であることから太古から微生物分解を受けてきたと考えられる。本研究では馬尿酸の化学構造と代謝経路に注目して新しい微生物反応を検索することを目的とした。 まず自然界から馬尿酸資化性微生物の単離を行った。馬尿酸を唯一の炭素源とする培地を用いて土壌、植物サンプルなどから細菌69株、放線菌24株、酵母59株、糸状菌23株の計175株を単離した。続いて単離したすべての菌株の培養上清をHPLCで分析したところ多くの菌株では予想通り安息香酸に加水分解されていた。生育試験では馬尿酸に対し良好な生育を示した酵母1株、糸状菌1株は安息香酸に対しても良好な資化性を示した。真核生物におけるベンゼン環の分解経路はほとんど明らかにされておらず、この代謝経路を明らかにできれば新規の微生物酸化反応が明らかになる可能性があり興味深い。さらに馬尿酸を酸化的にベンズアミドに変換する放線菌2株を見つけた。代謝物をダイアイオンカラムクロマトグラフィーなどで精製し、TLC並びにIRでベンズアミドであることを確認した。これに類似した反応では動物のペプチドホルモンのC末端アミド化反応が知られているが微生物ではこのような反応は見つかっておらず、また予備的な結果によると反応様式も異なっているようである。今回発見した馬尿酸からベンズアミドへの変換反応は生体アミドの形成のためのユニークな酸化的変換反応であり微生物生産への応用が期待できる。これら2株の放線菌の分類を北里研究所の高橋洋子博士に委託している。 以上環境微生物における馬尿酸の新規代謝経路を明らかにすることによって新しい微生物酸化反応を同定することができた。本成果は日本農芸化学会2003年度大会で発表される。
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