2002 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子欠損マウスを用いたFK506結合蛋白資の生理機能の解明
Project/Area Number |
14770057
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野口 直哉 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (20333792)
|
Keywords | FK506結合蛋白質 / 遺伝子欠損マウス / サイクリックADPリボース / インスリン分泌 / 耐糖能異常 |
Research Abstract |
膵β細胞からのインスリン分泌機構に関して、我々は「サイクリックADPリボース情報伝達系」という新たな概念を提唱してきた。これはブドウ糖刺激時にβ細胞でサイクリックADPリボース(cADPR)が生成され、これが小胞体からのCa^<2+>放出を起こしてインスリン分泌を誘導するというものである。現在までに、同伝達系が種々の細胞のCa^<2+>依存性応答に機能していることが明らかにされてきたが、cADPRによるCa^<2+>放出の分子機構は不明であった。我々は近年、in vitroの実験系でcADPRが小胞体上に局在しているFK506結合蛋白質(FKBP12.6)に結合し、これを介してCa^<2+>放出を起こすことを明らかにした。本研究では、遺伝子欠損マウスを作製し、上述のようにin vitroの系で機能の一端が示されたFKBP12.6について、その生理機能をin vivoで解明することを目的としている。 既にノックアウトマウス作製手順の、(1)ノックアウト用ベクターの作製、(2)相同組み換え体ES細胞の同定、(3)キメラマウスの作製、(4)ヘテロ変異マウスの作製までを終えており、平成14年度は当初の計画通り以下の手順で研究を遂行した。 1,上記ヘテロ変異マウスの雄と雌を交配し、FKBP12.6欠損マウスを得た。本研究ではFKBP12.6の全身欠損が致死的となる場合を考慮し、臓器特異的欠損も可能となるようベクターを構築してあるが、FKBP12.6欠損マウスが出生したので以下の解析は全身欠損型のFKBP12.6欠損マウスを用いて行った。 2,FKBP12.6欠損マウスは正常に発育し、随時および空腹時の血糖値・血漿インスリン値は正常で野生型との差は認められず、短期間の経過観察では糖尿病を発症することはなかった。しかし腹腔内ブドウ糖投与による糖負荷試験では、野生型に比しFKBP12.6欠損マウスでインスリン分泌が著明に低下しており耐糖能異常を示した。 以上より、FKBP12.6がブドウ糖刺激によるインスリン分泌において生理的に重要であると考えられた。
|
Research Products
(10 results)
-
[Publications] 野口 直哉: "FK506-Binding Protein 12.6ノックアウトマウスではブドウ糖刺激によるインスリン分泌が低下していた"生化学. 74・8. 919 (2002)
-
[Publications] 野口 直哉: "遺伝子改変動物を用いたインスリン産生細胞増殖因子Regの機能解析"生化学. 74・12. 1492 (2002)
-
[Publications] 野口 直哉: "FK506結合蛋白質欠損マウスのグルコース刺激によるインスリン分泌の低下"糖尿病. 75(In press). (2003)
-
[Publications] 野口 直哉: "Cyclic ADP-riboseによる小胞体からのCa^<2+>放出機構:FK506接合蛋白質の関与"Diabetes Frontier. (In press). (2003)
-
[Publications] Michiaki Unno: "Production and Characterization of Reg Knockout Mice : Reduced Proliferation of Pancreatic β-Cells in Reg Knockout Mice"Diabetes. 51 Suppl.3. S478-S483 (2002)
-
[Publications] Hiroshi Okamoto: "The Mechanism of β-Cell Regeneration by Reg Protein : Experiments with Reg Knockout Mouse Islets"Diabetes. 52(In press). (2003)
-
[Publications] 岡本 宏: "膵β細胞の死から再生へ:Reg-Reg受容体情報伝達系による再生医学"糖尿病. 46(In press). (2003)
-
[Publications] 高沢 伸: "NAD^+,ポリADPリボース,サイクリックADPリボースによる細胞の死・再生・機能発現"生化学. 74・8. 620 (2002)
-
[Publications] 高沢 伸: "Reg-Reg受容体系によるβ細胞cyclin D1遺伝子の活性化"糖尿病. 45 Suppl.2. S-169 (2002)
-
[Publications] Nausheen J. Shervani: "Autoantibodies to a pancreatic beta-cell regeneration factor, REG, in diabetes patients"生化学. 74・8. 819 (2002)