2004 Fiscal Year Annual Research Report
MuLVアクセサリー蛋白発現のメカニズムとウイルス播種の制御の解明
Project/Area Number |
14770133
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
藤澤 隆一 獨協医科大学, 医学部, 講師 (70319664)
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Keywords | MuLV / アクセサリー蛋白 / 糖鎖修飾Gag蛋白 / MDCK / 神経病原性 / ウイルス播種 |
Research Abstract |
同種指向性マウスレトロウイルス受容体mCAT1とGFPの融合蛋白を恒常的に発現させたイヌ腎上皮由来MDCK細胞に、神経病原性KPウイルスあるいは弱毒ウイルスKP41を感染させ、各種ウイルス蛋白の発現や細胞内局在を解析した(両ウイルスの違いは、MuLVアクセサリー蛋白、すなわち糖鎖修飾Gag蛋白:Glycogagの細胞質内ドメインをコードする領域の5アミノ酸だけである)。KP41感染細胞におけるGlycogagの発現量は、KPに比べて増加し、外被蛋白SUは著しく減少していた。外被蛋白前駆体の減少はSUに比べて顕著ではなかった。細胞内局在を解析すると、KP感染細胞に於いてGlycogagとエンドソームとの共局在が認められた。GlycogagはKP感染細胞では先端側細胞膜(apical membrane)、KP41では細胞膜全周性に局在していた。SUは、KP感染細胞では主に先端側細胞膜(apical membrane)に認められたのに対して、KP41では細胞質を中心に局在し、細胞膜上への局在は明瞭ではなかった。KP41感染細胞から培養上清中に放出される感染性ウイルスの総量は、KP感染細胞に比べ低下していた。ウイルスの放出部位を検討したところ、KP感染細胞では先端側(apical)から有意にウイルスが放出されるのに対して、KP41感染細胞では先端側・基底側に有意な差は認められなかった。培養上清中に放出されるウイルス粒子に於いて、ウイルス構造蛋白GagとSUとの比をとると、KP41ウイルスのSUが著しく減少していた。 ウイルス感染細胞に於いてGlycogagの発現部位とウイルスの出芽方向が一致すること、KP41感染細胞ならびにウイルス粒子中で外被蛋白SUが減少していたことは、GlycogagがSUの発現、ウイルスの出芽、並びにウイルス粒子の感染性に重要な影響を及ぼすことを示唆する知見である。このことはまた、in vivoにおいてGlycogagがウイルス播種に重要な役割を果たすことと合致する。 本研究はKPとKP41ウイルスのphenotypeの違いをin vitroで初めて示した系であり、構築した実験系は今後、レトロウイルスの複製機構・ウイルス播種の制御やGlycogagのウイルス生活環における役割を解明する上で有用であると考えられる。 結果の一部は、Cold Spring Harbor "Retroviruses 2004" Meeting、第52回日本ウイルス学会、The 2004 International Workshop on Retroviral Pathogenesisの学術集会で報告した。
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