2002 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオーム解析法を用いた外因性内分泌攪乱化学物質の中枢影響のプロファイリング
Project/Area Number |
14770150
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
渡邊 正知 獨協医科大学, 医学部, 助手 (30306203)
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Keywords | 外因性内分泌攪乱化学物質 / 環境ホルモン / トリフェニル錫 / プロテオミクス / プロテオーム / 海馬 / 脳 / ハムスター |
Research Abstract |
本研究では、外因性内分泌攪乱化学物質(EDCs)の中枢神経系への影響を評価するために、プロテオーム解析によるEDCs関連タンパク質分子群のプロファイリングを行う。 本年度は、まず学習・記憶の中枢となる海馬に着目し、代表的EDCsであるトリフェニル錫(TPT)を用い、次世代影響を加味した慢性暴露試験を行った。また、TPTの代謝能は「ラット・マウス>ハムスター≧ヒト」より、試験にはハムスターを用いた。 海馬より抽出したタンパク質を、高分解能を有する二次元電気泳動にて分離し、約550スポットを高感度に検出した。雄の各成長過程において、検出された各スポット量を対照群と比較したところ、親・成獣では4点、F1・成獣では9点、それぞれ発現量の変動が認められ、TPTによる海馬タンパク質発現への影響が明らかとなった。一方、F1・幼若期では発現量の変動は認められず、TPTの海馬への影響は成獣に強く現れることが明らかとなった。さらに、雌に関して検討したところ、親・成獣でのみ1点発現量の変動が認められ、TPTは雄性に強く影響する事が示唆された。 本研究により、TPT暴露による海馬タンパク質発現量の変動が明らかとなり、それによる機能影響が示唆された。また、発現量の変動が認められた各スポットは、成長過程(暴露期間)や性差を反映した形で発現しており、それらを加味したマーカー分子として期待される。現在、変動分子の同定を進めている。 最も注目すべきは、本研究で示唆された「中枢神経系に対するTPTの影響の性差」である。近年、TPTの攪乱作用としてアロマターゼ活性阻害が明らかとなった。脳アロマターゼは雄性脳への分化およびニューロステロイド合成系において重要な役割を果たす。これらアロマターゼ活性への影響を考慮し、今後、TPTの中枢影響と性差に関しその要因を明らかにしたい。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 渡邊正知(Masatomo Watanabe): "C末端からのタンパク質同定"獨協医科大学医学総合研究所紀要・2001年. 4. 25-26 (2002)
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[Publications] 渡邊正知(Masatomo Watanabe): "プロテオーム解析を用いたトリフェニル錫慢性暴露による海馬機能能障害の検討(Proteomic analysis of differential protein expression in hamster hippocampus induced by chronic exposure of triphenyltin)"日本衛生学雑誌(Japanese journal of hygiene). 58・1. 197 (2003)