2002 Fiscal Year Annual Research Report
フロン代替溶剤1―ブロモプロパンの生殖毒性と作用機序の解明
Project/Area Number |
14770165
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 哲也 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (90303635)
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Keywords | 1-ブロモプロパン / フロン代替溶剤 / 生殖毒性 / 性周期 / 卵巣 / 卵胞計測 / 連続切片 / 吸入曝露 |
Research Abstract |
40匹のWistar系非妊娠雌ラットを4群に分け、3群に200,400,800ppmの1-BPを一日8時間、週7日問で12週間吸入曝露し、対照群には新鮮空気のみを吸入させた。性周期を調べるために膣スメアを毎日採取した。800ppm群は衰弱が著明であったため7週で曝露を中止し断頭・解剖した。他の群は12週間曝露し性周期を揃えて(発情休止期第1日で)断頭・解剖した。卵巣は10%緩衝ホルマリン固定、パラフィン包埋を行い、8μm厚の連続切片を作成し、HE染色を行った。5枚ごとの切片について正常形態の卵胞数を計測し、始原卵胞・成長卵胞・濾胞卵胞に分類した上で各個体ごとに総数を算出した。卵胞数は分散分析の後、性周期はKruskal-Wallis検定の後にDunnettの多重比較法を用いて統計解析を行った。800ppm群については週齢が一致した対照群が設定できなかったことにより解析からは除外した。性周期は800ppm群で曝露第4〜6週頃から不規則となり、第7〜9週には全てのラットで不規則となるかまたは停止した。400ppm群では曝露第7〜9週頃から不規則となるラットが有意に増加した。200ppm群では性周期への有意な影響はみられなかった。卵巣卵胞数の検討では、400ppm群で成長卵胞・濾胞卵胞の有意な減少が認められたが、始原卵胞には有意な数の変化はなかった。200ppm群では濾胞卵胞の有意な減少がみられた。本研究の結果からは1-BPの生殖障害の機序として、卵胞細胞の成熟過程の障害し、2-BPとは異なる機序で卵巣機能を障害することが示された。1-BPは現在も産業現場で使用されているが、その取り扱いには十分な注意が必要である。
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[Publications] Yamada T. et al.: "Exposure to 1-bromopropane causes ovarian dysfunction in rats"Toxicological Sciences. 71. 96-103 (2003)
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[Publications] Wang H.et al.: "Dose-dependent biochemical changes in rat central nervous system after 12 week expusure to 1-bromopropane"Neurotoxicology. 24. 199-206 (2002)
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[Publications] Wang H.et al.: "Biochemical changes in the central nervous system of rats exposed to 1-bromopropane for seven days"Toxicological Sciences. 67. 114-120 (2002)
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[Publications] 那須民江: "内分泌かく乱化学物質の毒性機序とリスク評価"現代医学. 50. 59-69 (2002)