2004 Fiscal Year Annual Research Report
分子疫学的手法を用いた地域におけるHIV感染伝播経路の解析
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14770197
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
小島 洋子 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 研究員 (70291218)
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Keywords | 遺伝子解析 / 疫学 / サブタイプ / HIV / 遺伝的特徴 / V3 / 薬剤耐性変異 |
Research Abstract |
遺伝子解析を行ったウイルスは53株で、env-V3の塩基配列分析からサブタイプを同定した結果、日本人男性でサブタイプBが49株、サブタイプAEが1株、外国人女性でサブタイプAEが3株であった。 これらのウイルス株の中でサブタイプB株に着目すると、2001年以降に検出したサブタイプBの株では遺伝的に多様な広がりをもっていることが観察された。この傾向はpol領域でも認められた。 env-V3のcrown tetrapeptideモチーフに関しても、サブタイプBの49株中に、主流であると言われているGPGRが27株の他にGIGPRモチーフをもつ株が2株、GPGQが8株、GPGGが4株、GPGKが4株、APGRが3株、GMGRが1株存在し、多様性が増加する傾向は示された。 遺伝的に非常に近縁でV3 loop内で同一の珍しい特徴をもつアミノ酸の挿入や欠失がみられる複数の株が2グループ確認された。その1つは2001年に検出したサブタイプBの3株であり、V3loopの19番目と20番目の間にIleあるいはMetの挿入、24番目にアミノ酸の欠失がみられ、アミノ酸レベルでは90〜98%の相同性を示した。この3株に対してpol領域について系統樹解析を行うと、V3同様に非常に近縁で、アミノ酸レベルでは98〜100%と高い相同性がみられた。また別の特徴的配列をもつ2株はcrown tetrapeptideモチーフ内にIleの挿入変異がみられ、V3領域においてアミノ酸レベルでは97%の相同性を示した。これらの感染源が同一であると考えられるウイルスの存在は、地域におけるコミュニティーでのHIV感染の伝播経路を推定することができた。 pol領域の解析により、多型の可能性も考えられるが薬剤耐性変異をもつウイルスがみつかり、薬剤を投与している感染者から新たに感染したと考えられる例もみられた。 伝播経路や感染の広がり、また薬剤耐性変異ウイルスを調べる等、分子疫学的手法を用いることは有用な手段であると考えられた。
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Research Products
(1 results)