2002 Fiscal Year Annual Research Report
葉酸還元酵素遺伝子多型とメトトレキサートの有効性と副作用
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14770216
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
浦野 和子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (40277140)
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Keywords | 関節リウマチ(RA) / MTX / Methlenetetrahydrofolate reductase (MTHFR) / ハプロタイプ / 遺伝子多型 / オーダーメイド医療 |
Research Abstract |
5,10-Methylenetetrahydrofolate reductase (MTHFR)は葉酸代謝における主要な酵素である。MTHFR遺伝子にはC677多型、A1298C多型があり、いずれも変異により酵素活性が低下し、特に677Tアレルでは血清葉酸濃度が減少することが報告されている。したがってこれらの遺伝子多型はMTXの臨床有用性に何らかの影響を与える可能性がある。我々は関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis, RA)を対象にMTHFR遺伝子多型がMTXの効果・副作用に与える影響を検討した。(方法)当センターを受診したRA患者からMTX服用暦のある106例を無作為に抽出し、インフォームドコンセントを得た後、末梢血からゲノムDNAを採取し、MTHFR遺伝子型をすでに報告されている方法を用いてPCR-RFLPで検討した。またEMアルゴリズムに基づいて作成されたプログラムであるLDSUPPORTを用いてハプロタイプを推定した.対象患者においてMTXは2.5mg/週〜7.5mg/週で開始され、臨床効果に応じて増量された。MTXの有効性はMTX5mg/週で開始された症例における投与前後3ヵ月間の圧痛関節数、腫脹関節数、CRP値、赤沈値の比較で検討した。またMTX投与量の増加症例数も検討した.これらの有効性の指標および調査期間中に生じた副作用とMTHFR遺伝子型の関係をretrospectiveに検討した。(結果)観察期間中に19.8%の症例で副作用が認められた。副作用の発症をMTHFR遺伝子型別に検討すると、C677T多型の677Tアレルを有する症例で副作用発現が有意に高頻度であった(p<0.05,relative risk[RR]=1.25, 95%CI 1.05-1.49)。有効性との関連では、A1298C多型のCアレルを有する症例でCRP値、赤沈値が有意に改善していた(p<0.05)。また、MTX 5mg/週以下で投与開始した症例において、最終評価時のMTX投与量が5mg/週以下であった症例数はA1298C多型のCアレルを有する症例で有意に多かった(p<0.05,RR=2.18, 95%CI 1.17-4.06)。一方、C677T多型では有効性との関連は認められなかった。ハプロタイプの検討の結果、副作用との関連では677T-1298Aハプロタイプが有意に高頻度であり(P<0.05,RR=1.42, 95%CI 1.11-1.82)、677C-1298CハプロタイプはMTXの有効性に関連していることが示された。Pharmacogenomicsに基づくオーダーメイド医療により、RA薬物治療の効果を高めることができると考えられる。今回の結果からMTHFR遺伝子の検討が有用であることが示唆された。
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[Publications] Urano W, Taniguchi A, Kamatani N et al.: "Polymorphisms in the methylenetetrahydrofolate reductase gene were associated with both the efficacy and the toxicity of methotrexate used for the treatment of rheumatiod arthritis, as evidenced by single locus and haplotype analysis"Pharmacogenetics. 12. 183-190 (2002)
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[Publications] 谷口敦夫, 浦野和子, 鎌谷直之: "抗リウマチ薬のpharmacogenetics"日本臨床. 60巻12号. 2339-2344 (2002)
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[Publications] 谷口敦夫, 浦野和子, 鎌谷直之: "免疫抑制剤のpharmacogenetics"日本臨床免疫学会会誌. 25巻1号. 105-109 (2002)