Research Abstract |
【背景と目的】川崎病の長期的予後は依然として不明な点も多く,心血管後遺症の有無にかかわらず,長期的な身体的,精神的健康状態について調査した研究は少ない.本研究の目的は,罹患後5年以上経過した青年期の川崎病罹患者の血清脂質および健康関連QOLについて検討することである. 【方法】1)8年以上の長期観察を行っている85人に対し,Body Mass Index(BMI),総コレステロール,HDL-コレステロール,LDL-コレステロール,中性脂肪を測定した.2)16歳以上でかつ罹患後5年以上経過した437人に,SF-36日本語版を郵送し調査した.SF-36は,8つの下位尺度[身体機能,日常役割機能(身体),日常役割機能(精神),全体的健康感,社会生活機能,体の痛み,活力,心の健康】により構成される健康関連QOLの包括的尺度であり,様々な疾患を対象に使用されている.また、性別・年代別の国民的標準値と比較して検討することができる.臨床経過ならびに心後遺症については診療記録をレビューした.心後遺症については,A群:なし,B群:退縮したもの,C群:冠動脈瘤残存,D群:巨大冠動脈瘤,心筋梗塞の既往ありのもの,に分類し解析した. 【結果】1)対象者のほとんどは,BMI及び血清脂質は正常範囲であった.C群においてBMIやLDLコレステロールが高値の例があったが,心筋梗塞を発症した例はなかった.2)437人中96人には転居のため届かず,341人に郵送可能であった.167人より回答を得た(回答率49%).回答者の年齢は16-34歳(中央値23歳)で,全群とも,8つの下位尺度すべてについて,国民的標準値と比較して差はみられなかった.しかし,C, D群では他の群と比較して,活力,全体的健康感の項目が低スコアである者が多かった. 【考察】川崎病瘤残存例において,LDLコレステロールが高値を呈した例があり,両親の心配や胸痛発作が,過度な運動制限につながった可能性が考えられた.川崎病既往者の健康関連QOLについて,青年期では比較的良好であった.しかし,今後は加齢に伴う動脈硬化性病変の増加が考えられるため,さらなる検討が必要と考えられた.
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