2002 Fiscal Year Annual Research Report
マイトマイシンCの細胞致死作用の温熱による増強に及ぼすp53遺伝子型の影響
Project/Area Number |
14770450
|
Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
金 朝暉 福井医科大学, 医学部, 助手 (70324150)
|
Keywords | 温熱療法 / 化学療法 / 温熱化学療法 / p53 / 細胞周期 / アポトーシス / Hsp72 |
Research Abstract |
【目的】固形癌に対する化学療法単独の抗腫瘍効果は低いことから、従来より副作用を最小限にさせるために、集学的癌治療の一様式として制癌剤と温熱療法との併用(温熱化学療法)が広く用いられている。近年癌抑制遺伝子p53変異の有無と癌細胞の放射線感受性、制癌剤感受性あるいは温熱感受性との関連性について様々な報告がされている。本研究は温熱化学療法における制癌剤と温熱との相互作用とp53遺伝子型との関連性を解析し、温熱化学療法のメカニズムを明らかにすることを目的とした。 【材料と方法】1.細胞:ヒトp53欠損肺癌H1299細胞に、正常型p53発現ベクターを導入したH1299/wtp53細胞、変異型p53発現ベクターを導入したH1299/mp53細胞及び対照としてベクターのみを導入したH1299/neo細胞を用いた。2.温熱化学増感効果の解析:制癌剤としてマイトマイシンC(MMC)を用いた。MMC単独処理、42℃温熱単独処理とそれらの同時併用処理を種々の処理時間で行って、コロニー形成実験より温熱化学増感効果を解析した。3.温熱化学増感効果のメカニズムの解析:メカニズムの解明をアポトーシス誘導頻度の評価(蛍光色素染色法)、細胞周期位相応答の変化(フローサイトメトリ)及びHsp72の細胞内蓄積動態(Western blot法)より行った。 【結果と考察】1.ヒトp53欠損肺癌H1299細胞に、正常型p53発現ベクターを導入したH1299/wtp53細胞、変異型p53発現ベクターを導入したH1299/mp53細胞及び対照としてベクターのみを導入したH1299/neo細胞を用いて、42℃加温とMMCとの併用処理により、いずれの細胞においても顕著な増感効果が認められることから、その温熱化学増感効果は癌抑制遺伝子p53非依存的に誘発されることが示された。2.その温熱化学増感にアポトーシス誘導の促進及び細胞周期位相応答の調節が寄与していることが示唆された。3.p53遺伝子のstatusにかかわらず、いずれの細胞のおいても温熱によるHsp72の蓄積誘導はMMCの併用により抑制されなかった。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Jin, Z.H., 他6名: "Effects of combined treatment with 4O℃hyperthermia and bleomycin on the accumulation of heat shock protein in murine L cells"Int. J. Oncol.. 20. 137-142 (2002)
-
[Publications] Matsumoto, H., 他6名: "Intercellular signaling mediated by nitric oxide in glioblastoma cells"Method. Enzymol.. 359. 280-286 (2002)
-
[Publications] 松本英樹, 他4名: "集学的癌治療の研究と臨床「集学的癌治療における活性窒素種の役割」"加納永一. 10-16 (2002)
-
[Publications] 金 朝暉, 他5名: "集学的癌治療の研究と臨床「光力学的治療による制癌:沿革から現状まで」"加納永一. 17-23 (2002)
-
[Publications] 畑下昌範, 他5名: "集学的癌治療の研究と臨床「癌関連遺伝子と細胞周期」"加納永一. 93-99 (2002)
-
[Publications] 林 幸子, 他9名: "集学的癌治療の研究と臨床「細胞および分子レベルにおけるハイパーサーミアの基礎的局面」"加納永一. 110-127 (2002)
-
[Publications] 大坪俊雄, 他6名: "集学的癌治療の研究と臨床「癌化学療法剤殺細胞効果の温熱による増強」"加納永一. 127-135 (2002)