2002 Fiscal Year Annual Research Report
インビボ・インビトロPET法による抑鬱発生メカニズムの解明研究と薬物治療効果判定
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14770489
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田代 学 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (00333477)
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Keywords | ポジトロン放出断層法(PET) / サイコオンコロジー / 抑鬱 / 化学療法 / 脳機能画像 / 脳内ヒスタミン / ドキセピン / フルオロデオキシグルコース(FDG) |
Research Abstract |
本研究においては、食道癌、皮膚癌などの患者に対して^<18>F-フルオロデオキシグルコースを用いたPET検査を行ない、その局所脳活動を記録した。その際、抑鬱、社会的望ましさなどの評価も行なった。撮影された脳両像は、SPMソフトウェアを用いて標準脳に変形したのち、統計的に有意差が認められる領域を抽出した。癌患者の脳における活動低下領域は、前頭前野、前部帯状回、大脳基底核などであったが、小脳虫部は活動亢進を呈した。また化学療法後の患者では前頭前野の活動低下が認められたため、抑鬱の所見が検出しにくくなることがわかった。これは、PETを癌患者の抑鬱評価に応用する際に重要な意味をもつ。さらに、社会的望ましさ尺度が高い患者では前頭前野などの活動亢進傾向が認められ、社会的ストレスが脳活動亢進を促す可能性があることが示唆された。これは、心理的因子と癌の進行の関係を考える上で重要な所見である。 ^<11>C-ドキセピンを用いたPET検査では、まず薬物治療効果判定へのPETの有用性を評価する目的で、ヒスタミンH1受容体拮抗薬を服薬した健常ボランティアの脳内ヒスタミンH1受容体の分布を測定した。服薬後の健常人では受容体結合能の低下がみられ、これは拮抗薬によるH1受容体占拠がPETで測定可能であることを意味する。鬱病患者における測定では脳全体とくに前頭葉におけるヒスタミンH1受容体結合能の低下が観察され、ヒスタミンH1受容体量の測定にPETが有用であることが確認された。鬱病に伴う身体症状である不眠や食欲不振は癌患者でも頻繁にみられる症状で、その原因解明に、PETが有用であることが示唆された。 本研究では動物実験も計画されていたが、新研究棟建設に伴う研究室移転が予算の事情で平成15年度から14年度に急遽繰り上げられたため、動物実験スペースが制限され、動物実験は予備実験程度に留まった。成果は15年度に期待したい。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Tashiro M, Juengling F, Moser E, Reinhardt M, Kubota K, Yanai K, Sasaki H, Nitzsche E, Kumano H, Itoh M: "High Social Desirability and Prefrontal Cortical Activity in Cancer Patients : A Preliminary Study"Medical Science Monitor. 9(5)(印刷中). (2003)
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[Publications] Tashiro M, Mochizuki H, Iwabuchi K, Sakurada Y, Itoh M, Watanabe T, Yanai K: "Roles of histamine in regulation of arousal and cognition : functional neuroimaging of histamine H1 receptors in human brain"Life Sciences. 72(4-5). 409-414 (2002)
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[Publications] Mochizuki H, Tashiro M, Tgawa M, Kano M, Itoh M, Okamura N, Watanabe T, Yanai K: "The effects of a sedative antihistamine, d-chlorpheniramine, on visuomotor spatial discrimination and regional brain activity as measured by positron emission tomography"Human Psychopharmacology and Experimental. 17(8). 413-418 (2002)
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[Publications] 田代学, 伊藤正敏, 窪田和雄, 谷内一彦, 吉岡孝志, 山浦玄吾: "担癌生体の脳活動解析におけるPETの実際"癌治療と宿主. 15(2)(印刷中). (2003)
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[Publications] 田代学, 伊藤正敏, 谷内一彦: "精神症状発現に関するニューロイメージング研究"医学のあゆみ. 205(12)(印刷中). (2003)
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[Publications] 田代学, 谷内一彦: "抗ヒスタミン薬の画像研究から明らかにされるH1受容体の中枢薬理作用"アレルギー科. 13(5). 434-442 (2002)
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[Publications] 田代学: "がん患者の免疫能と脳活動(「テクニカルターム 緩和医療」における分担執筆)"先端医学社. 260 (2002)